コート上の天使

□勝者と敗者
1ページ/1ページ



相手を黙らせる圧倒的な存在感
そして実力



単純
なのに強い

噂のサウスポーエースはそんなヒトだった



どんなに練った時間差攻撃でも
ブロックでも
打ち抜く


まるでそんなもの最初から存在していなかったかのように


昨日の青城は強かった

コートを制する

まさに大弾幕にある言葉の通りのプレースタイル



あの青城が
適わなかった白鳥沢



喧嘩でもふっかけてやろうかと思ってた
次は同じ様にはいかせないって


でも
試合終了のホイッスルが鳴って
ネット際で握手して

振り返った及川さんの顔見たら
何もかもが喉奥に引っ込んだ



どんな顔して会えばいいのか
何を、どんなテンションで話せばいいのか

急にわからなくなって


複雑だなって他人事のように思ってた
烏野だって当事者なのに、ね





『さて、』


帰ろう

帰って部活だ
また今日から積み重ねていく日々が始まるんだ


烏養さんに
決勝戦 白鳥沢優勝

と短く連絡した




青城を上回った白鳥沢

勝つには青城も白鳥沢も真似てはダメだ


烏野の
オリジナル



唯一無二にならないとこの二チームには勝てない



やっぱり実践か?
同じチーム内じゃ手の内が知れすぎているし、試合の中で試していかないと…





「あのッ!」

『!は、はいっ』



考え事をしていたからだろうか、
声をかけられ若干上ずった声が出てしまった

振り返れば


8番 白鳥沢の

唯一の1年生スタメン
五色くん

ストレートが綺麗なスパイカー




なのになぜか喋らない




『?あの、』

「!あッえっとコレ!」



落としましたよ!

ガッと差し出されたのは何の変哲も無いただのボールペン
でも確かに私の物で



『あ、ありがとうございます』



ボールペンを受け取って
会釈をした



そして、沈黙

居づらくなって
それじゃあ、と足を1歩引いた




「あ、あのッお名前聞いてもいいでしょうかッ」

『わ、私?』



ハイっ

と運動部らしい返事をされたので
焼きぎょーざ、です
と素直に答えてしまった



「ぎょーざさんとお呼びしてもいいですか?!」



ぎょーざさん
妙なさん付けに今の設定を思い出した

そうだった
私は今一応高校生じゃないってことでここに来てるんだった


ここは余裕を持って
この謎の展開を切り抜けるべきだ


私は
どうぞ、と
笑って
ボールペンありがとう、と
お礼を言って

さあ、帰る!





「あ、ぎょーざさんッ」


まだ何か?!
さっそく呼ばれたさん付けがくすぐったい


「また会えますか?」


面白い質問をされた

そりゃもちろん
答えは はい、だ


『五色くんが次も出るなら』



それにはコッチも勝って
先に進んで行かなければいけないけど


今度こそ
やり取りは終わって

体育館を出た


一度家に帰ってメイク落として着替えなきゃ

部活に間に合うかな









[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ