コート上の天使

□バレーをしよう
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「焼きさんっ焼きさんっ!」



『やだやだやだ』

「さっきの!もう一回!」

『うわあ、もう、日向くん勘弁して…!』




床に倒れ込むぎょーざちゃんをがくがくと揺らす日向

本当に同情する


俺だって息が上がって汗が止まらないんだ。
ほぼ俺らと同じことしてるぎょーざちゃんはほんとスゴイ



「こら日向ー、ぎょーざちゃん休ましたれよ」

「で、でも菅原さん…!さっきの凄かったじゃないですか!オレもう一回見たいです!」


まあ、確かに凄かったよ
烏養さんだって
おお
って
ちょっとビビってたし



「やってやれよ。俺も見たい」

『烏養さん鬼。私マネージャーなのに、』



いつもぎょーざちゃんは男子に引けを取らない程上手い
上手さが光る

けど今日は特に、より新しいものを見せてもらっている気がする。

そんなわけでプレー1つ1つに日向が待ったをかけてなんども繰り返させている。

基本的にはリベロの役割で練習に参加してるけど、今日は何でもアリみたいだ



『じゃあトス、』

「俺が上げる!」



食い気味に答えたのは影山

影山もよく見てるもんな
一瞬も、逃さないようによく普段から見てる


日向がぴょんぴょんとジャンプしてネットの向こう側でブロックにつく



「…おっし、じゃあ俺も飛ぶー」

『す、スガさん?』

「さっきと同じ条件じゃないと意味無いだろ?」



そう
男子の2枚ブロックを抜いたんだ
この子

セッターとしてだけでなく、
スパイクの能力も高い


影山が山なりにボールを投げ、ふわりとぎょーざちゃんが返す


トスが上がって日向とタイミングを図って飛ぶ


「あああぁーっ!」


日向の小指を引っ掛けるようにプッシュ

ボールはこっち側に落ちた


「ああっまただああー!」



もう1本!

日向が言えばぎょーざ呆れた顔をして助走の分だけ下がった



『…若干離し気味でお願い』

「おー」



ボールが中を舞ってトスが上がる

せーのっ


タイミングはドンピシャなはずだ


ミートしたいい音をたてて、そしてボールはコートに落ちた


こっち側に




「はああ?なんだそりゃ!」


がたんっとパイプ椅子から勢いよく立った烏養さん
俺もそう思う

だって
ブロックはおそらくノータッチ

なにが起きたんだ




「うおお!すっげえじゃねーかぎょーざ!」


西谷までも興奮
旭なんか完全びびっちゃってるし



「もう1本、」

『…へ?』



地響きみたいな低い声



「もう1本、今の」

『ええ…飛雄まで、』



影山は手で下がれって
強制的にもう1本上げるつもりだ


同じスパイクが打ち込まれる
結果も同じ



「…お前、セッターよりスパイカーの方が向いてたんじゃねえの?」

『うっ…そんなこと言わないでくださいよ!』

「誰でもできるもんじゃないぞ」



烏養さんが言いたいこともわかる

こんなのされたらたまったもんじゃないもんな




「お前、ボールのどこ叩いてる?」

『どこって、』

「俺には端を触ってるように見えた」



影山は淡々と言ってのけた
まず見えてたとこもすげえけど


ううん、そうかも
なんてぎょーざちゃんは答えている



端?ってどこ




「だな。端っつーか、横っつーか。あとコイツ体柔らかいからな」


烏養さんはぐいぐいとぎょーざちゃんの腕やら肩やらを動かす


つまり、肩の可動域が広いってことか


うん
ハイスペックだな
まったく
そんなん反則だべ



「おー!すげえ焼きさんっ!もう」

『もう1本なしね!』

「ええー」

『私死んじゃうから!』

「これできれば音駒に勝てるかも!」

『勝つ前に死んじゃうから!』




もう一回もう一回とせがむ日向
後ろでじりっと見つめる影山
もうヤケクソだあ!と要望に応えるぎょーざちゃん


微笑ましいやらなんやら


でも
東京合宿も決まって
また新しく積み上げて
次は絶対、全国へ行く

負けから
新しくやってやろうって強く思った






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