コート上の天使

□問題文をよく読んで
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『ココとココの関連があって、』



問題用紙にグリグリと囲み印
シュッと曲線が引かれて、もう一個のグリグリと繋がれる




『そうしたら次にコッチと繋がってくるわけ』



今度はグリグリから矢印が引かれる



ガヤガヤとした部室なはずなのに
スッと耳に入ってくるぎょーざの声


隣では日向が菅原さんに教わって
あっちの方では田中さんとかが騒いでる


月島は…たぶん帰った




『こうやってまとめていけば…』



問題用紙からすこし視線をズラして顔を見る


真剣に問題用紙に書き込みしながら説明してる。

俺のため


俺も頬杖つきながらそれを見ていた
だって俺のために教えてくれてるから



けどちょっと顔見たら

こっち向け
って
思う



そんなこと考えながらぎょーざを見ていたら
はらり、と耳にかかっていた髪が一房こぼれた

俺はぎょーざの髪に触れて、耳にかけ直した


無意識だった
落ちたものを拾う、みたいな

そんな感じ


ばっちり目が合って

あ、コッチ見た
って



目丸くして
ちょっとびっくりしてるように見えた

でもすぐにむっとして




『もう、聞いてた?』

「…聞いてた」

『なにその微妙な間は。怪しい』



もー
と言いながら出してきた問題用紙

解いてみろってことだと思う



ざっと問題文を読んで俺なりに解く
俺なりに


でも不思議だ
正誤問題で当たり前にこれだろ、って
わかるやつが出てきた


わけわかんねぇのもあったけど、
わかるやつも何個かあった

最後の問題が終わってシャーペンを置いた。


ん、って問題用紙をぎょーざに渡す

にまーって笑って目を通す
普通に可愛いんだよ、くそ








『…ねえ、ほんとにさっきの話聞いてた?』

「あ?」

『だってココ』




指差した先は
割と自信があった問題

マジかよ
間違えてんのか



ぎょーざの指先が問題文をなぞる。

…ん?




「正しくない、もの」

『どーせよく読まずに答えちゃったんでしょ』

「…。」


『まったくもう。

最後までちゃんと読んで。
せっかく答えがわかってるのに、勿体無い。
こういう間違え私嫌い』



嫌い
ぎょーざにしては珍しく嫌いなんて思い切った言葉

嫌い がなぜかやたらと響く





『だってさ、
両思いなのに早とちりしてすれ違って違う相手選ぶのと一緒だと思わない?』




早とちりして違う相手を選ぶ…
早とちりしてぎょーざじゃない人を選ぶ…

あり得んのか?そんなこと
いや、あり得ねえだろ

早とちり なんてことじゃ済まされない



そんなことしたら
きっと俺 一生後悔する、





『そういう事だからさ、ちゃんと正しい子を選んであげてね』




素直に頷けた

俺、絶対問題文よく読む
それでちゃんと


「ぎょーざを選ぶ、」

『うん?』

「いや、その…よくわかった」

『それは良かった』






がんばろうね

そう言われて
また素直に頷いていた










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