コート上の天使

□何時だって会いに行く
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画面には通話終了の文字

時が止まったみたいだ

どうやら
耳がおかしくなったらしい
いや
頭かな?

岩ちゃんに散々言われいる
頭イカれてんじゃねーの?
が、現実味を帯びてきた




いや。
ばかばかばか

そんなワケないでしょ


なにボケっとしてんだ俺は


及川さんにあいたい、


なんて
夢のような台詞

だけど

嘘です、すいません


なんて
そんなの俺に通用すると思ってるのかなあの子は




家を飛び出し夜道を全力で走る

とりあえず家だ
この時間ならその可能性が高い



家に居なかったら…
その時また考える!



ほんの少し
思いを吐き出してくれたらな
なんて

そんな気持ちだった


まさか
あんなにも切羽詰まっていたなんて、


会いたいなんてお安い御用
寧ろ喜んで


耳に残るぎょーざちゃんの声

震えてた
震えるほど何かに耐えている

そんな時に
俺に会いたい、なんて

これ程の幸せってあんのかな?


ああ
早く会いたい

俺だって
会いたいよ

もっと速く走れないかなこの足ったら




坂を登って降る
公園の横を抜ければすぐ

目的地が目視できた時


錆びた鉄がきいと軋む音

車だって通っている
なのになんで丁度聞こえたのかはわからない。
わからないけど俺の耳に感謝


だって
ブランコに座っているのは見慣れた姿

見間違うはずなんてない





「ぎょーざっ!」



弾けるように俯いた顔を上げた
まるまると目を見開いて
なんで、どうしてと

そんな言葉を遮って抱き締めた



『おいかわさ』
「ばか!何時だと思ってるの!こんなとこ一人で」
『だ、だって家は静かだから…』


車の音するし、犬の散歩の人、とかいるし
気が紛れるかと思って


段々語尾が小さくなっていく
また更にきゅうっと抱きしめ直した
そしたら
背中におずおずと手が回ったのを感じて
きゅんとした


小さいな
折れそう




『…及川さん』
「なあに?」
『…私頭がおかしくなった』


大丈夫、俺も


『迷惑かけてるってわかるのに、』


こんなにも切羽詰まっているぎょーざちゃんなのに
可愛いくて堪らないって思ってる
もっともっと悩めばいいって
それで俺を頼って


『会いに来てくれて、嬉しいって思ってます』



ああ
顔見られていなくて良かった
きっと
だらし無い顔しているに違いない



『おいかわさん、』
「ん?」
『何から話したらいいかわかんなくなっちゃいました』
「ゆっくり話そうよ」


時間ならいくらでもあるんだし

ぽんぽんと頭を撫でれば
うん、
と小さく頷いたのがわかった









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