コート上の天使

□身長差じゃない
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スパイカーの欲しがるトスに100パーセント応える努力をしたのか
それが理解できなきゃお前は独裁の王様に逆戻りだね




独裁の王様



及川さんの声が
ガツンと頭の奥に鈍く響く


嫌な響き
それをわかっていてこの人は言う




頭下げて
お願いしますと頼み込み
頭上がらない写真まで撮られて


とどめを刺された

何も返せる言葉がない
見降ろされてる



身長の差じゃない
それよりも何か違う
俺と及川さんは違う


俺と及川さんとの差


何を言えばいいかわからなくて
しばらく静かになった



「お前さ、」
「…はい、」


「ぎょーざちゃんとなんかあった?」
「!」
「あ、図星」
「な、なんで…」
「こんな話、俺じゃなくてぎょーざちゃんにするでしょ。お前なら」



その通り
あたりすぎてムカつく



「喧嘩でもしたの?」
「喧嘩はしてませんっ!」


「ふーん…喧嘩すらさせてもらえてないんだ」




ああ
何なんだこの人


叩くなら折れるまで


なんなら
俺は最初から折れてるのに





「ざまあみろだね、本当」


またさらに及川さんがでかく見えた

ざまあみろ、なんて
性格悪い



「お前、当たり前に思いすぎてたんだよ」
「当たり前、?」

「ぎょーざちゃんって存在が当たり前に感じすぎだって言ってんの」




思い返せばそうだ
隣にいた
すぐそばに居て
声をかければ返ってくる



「当たり前なんかじゃない。それがわかっていればお前、こんなことで悩んだりしないよ」



離れて精々有り難みを噛み締めるんだな



そう言って及川さんは階段を降りて行った




「徹!電話!」
「こんな時に誰?!今いい感じに締めたのに!」
「ぎょーざちゃんだって」
「ばか!先に言いなさい!!!」



そんな会話が聞こえて
ああ及川さんとは連絡してんだなあって
ぼんやり思った



及川さんには譲れない
それは変わらないけど

俺がわかっていないのはどうやら本当らしい



当たり前に思ってたんだ

ぎょーざが居ること
ぎょーざとバレーが出来ること
何もかも
当たり前だと思っていたんだ



「くそ、」


どうぎょーざと話していいか
わからなくなった
話すことが正解なのか
わからなくなった



離れて精々有り難みを噛み締めるんだな


離れて


やけに響いて
むしゃくしゃした









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