コート上の天使

□未完とおにぎりと
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「夏休み!だあー!」
「田中暑苦しい」
「やること変わんねえだろ」



夏休みに突入した
そうしたらすぐ東京合宿だ



「みんな自主練前に食べる?」


清水と谷っちゃんがおにぎり持ってきてくれた。
すげーと群がる俺ら


三角と丸、そして俵型
形が違うおにぎりがどっさり積まれている



「何これ?味違いとか?」
「ううん。握った人が違うだけ」
「谷っちゃん絶対これ!丸だべ」
「な、なんで…!なんでわかったんですか?!」


だって小さい
明らかに

三角と俵型に比べて


谷っちゃん手ちっちゃいもんな



俺は1番手前にあった三角を取って、後ろにいた影山に皿を回した


「ほら影山」
「あざす」

じーっと眺めて俵型を取った
取った後もしばらく見てた


「食わねーの?」
「いや…食います」


くわっと口を開けてかぶり付く
…ひと口でけぇ


「あの、」
「ん?」

「ぎょーざ来てるんですか?」
「え?」

「これ握ったのぎょーざですよね?」
「ええーっと…?」



ちらっと清水を見ると

「そうだよ。よくわかったね」



正解なんだ!
すげえな!


ぎょーざちゃんは家庭の事情でしばらく部活には来てない
学校も来たり来なかったりらしい

どうも
引っ越しするらしい



「え!ぎょーざ来てんのか?!」

反応したのは西谷
珍しい

「やっぱ球出しのヤラシさはぴかいちだよな!

あいつのフェイント今度こそ取ってやる!!」



そうだ
やっぱり皆感じていた

全員じゃない
足りてない

未完成、って言うのかな


ぎょーざちゃんはマネージャーだけど
俺らと同じだけボールを追って、
1年だけど大人で的確で冷静
それでいて可愛い妹みたいでもある


俺たちの自慢



「おいお前らー!」


烏養さんが体育館に入って来て、シューズを履き変えてる


「アイツ今日来るぞ」


アイツなんてすぐわかった
みんなもすぐわかった

だから騒いでる


「あれ…どうしたよ影山」
「え…」
「嬉しくないのかよ?」


何時もと違うなって思ったから
からかい半分で聞いてみたら
つま先の方じっと見て動かなくなった


え、なにこれ
もしかして地雷?
影山またケンカしたの?



「みっちりイジメてやろうぜ」

「おお…!イジメる…!」
「焼きさんを…!」
「なんかヤラシイぞ!!!」

「お前らやめなさい!」



大地の一喝を遠くで聞いて
影山は
なんでもないっす

っておにぎりもう一個食い始めた





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