コート上の天使

□関東遠征
1ページ/1ページ




夜中に出発して朝に埼玉に到着した。

道中仁花ちゃんからこんなことが、あんなことが、と仁花ちゃんらしい言葉で教えてくれた。
西谷先輩がオーバーハンドの精度をあげていること、スガさん中心にシンクロ攻撃の練習をしていること、サーブの強化だったり、飛雄と日向くんが取っ組み合いの喧嘩をしたことも。
私はうまいこと言えなくて、二人の仲を取り持つことができなかった
って仁花ちゃんは言ってたけど、きっとそんなことなかったと思う。その場に居なかったけど、そう思う。

確実に色々なことが変わりはじめてきて、春高予選に向けてみんなが動きだしてる。




「よォ、やっと来たな」

車から荷物を降ろしたりしていると、太陽の陽が陰り、顔を上げると鉄朗さんはじめ、音駒の人たちがいた。

『お久しぶりです』
「森然まで案内する」

わらわらみんなテンション上がり出して、あれは東京タワーかだのなんだの

「ぎょーざ、」
『研磨さん!』

左後方から話しかけられて
振り向くと相変わらずな研磨さんがいた

「…なんで、この前来なかったの?」

ぼそり、と
気をぬくと蝉の鳴き声にかき消されてしまうほどのボリューム

「そーなんだよ。研磨はぎょーざちゃんに会うのを楽しみにしてたらしい」
「クロうるさい。そんなんじゃない」
「辞めたの?って聞いてきたじゃん」

この二人の掛け合いも相変わらずだ、と思ってすぐに変わることなんかないだろうとも思った


『引っ越しです。だから今回来られて私も嬉しいです』
「はあ、お前かわいい」

丁度よく森然高校に到着して、鉄朗さんは無視した


体育館から日向くんの名前を叫びながら降りてくる男子。陽で髪がきらきらと輝いている。
少し距離が離れていてもわかる、長身の持ち主だ


「身長伸びたか?!」
「こんな短期間じゃ伸びねぇよ!」

日向くんがタメ語で話しているということは1年生なんだろう。

「おい、リエーフうるせえぞ」
「スイマセン、って…」

りえーふ、リエーフ、カタカナかな。ハーフ?
なんて考えていたら目があって、
例の天使さんですか?!って
そうしたら木兎さーん、と叫びながら体育館へ戻っていった


「ま、そういうことだ」
『いや、どういうことですか…?』
「みんなお前に会いたがってるってコト」


みんな?
なんで、そんな
…私に?
なぜ?


「日向とクロがみんなにぎょーざのこと言いふらしたから…」
『そ、そう…なんですね』


体育館に近づくにつれて、部活特有の掛け声と、ボールの音が聞こえてきて
今回の合宿は 所謂 マネージャー らしいことに専念しようと思っていたけど、わくわくが勝手に込み上げてきた。


「楽しみ?」
『へ?』

見上げると鉄朗さんがいて、にやにやしてる


「今すげーかわいい顔してた」
『はい?!』
「ま、時間はたっぷりあるんだ。楽しもうぜ」



長い足でさっと私の横を通り過ぎて、先に体育館へ入って行った

相変わらずよく読めないというか…




ため息をついたところで、ふいに
飛雄と目が合った

嫌味なのかってくらい思い切り目を逸らされた。


なんとなく感じていた飛雄との距離

気づいていないふりをして、大きく息を吸った






[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ