コート上の天使

□曲者揃い
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「はい、ダッシュー!」

うぇーい




もう何本目だろうか


見事に全敗だった
新しいことをやろうとしてるんだ
まだまだ噛み合わなくて当然


ペナルティの坂道ダッシュはこの暑さだとキツさ倍増だと思う


見ていてすごくきつそう
だけどなんかちょっといいなあって

今日の最後だし、




『私もやる!』
「「はあ?」」



盛大に振り返った汗だくの顔達


「お、おい、そんな気を使わなくていいんだぞ?」
「そ、そうそう!大地の言う通りだべ」
「気持ちだけ!ありがたく受け取るよ…!」


テンポよく
三年生達が言ってきた
なんだろう。
別に気を使ってるわけじゃないんだけど…




『そんなんじゃなくて!単純に走りたいなって』
「わざわざキツイことしたがるなんて理解不能ー。じゃあ僕の代わりに走ってよ」
「オイ月島ゴルァ」



そこまで言うと大地さんは
わかった、一緒にやるかって

なるべくみんな一列に並んで
一斉に駆け上った



見てるよりも傾斜がきつい
けど私は今日あんまり動いてないし、ラストのこの一本だけだから一瞬に思えた


みんなゴールと同時に地面に寝転んで
あー、とかはー、とか

今は積み重ねてる時だってわかっていても
全敗はフラストレーションが溜まる


みんなにドリンク渡して回って
自主練で散り散りになった



さて、どうしようか
私は何をやろう



オーバーハンド
シンクロ練習組

は潔子さんがついてるし



速攻組
には仁花ちゃんが球出ししてるし



サーブ組

の球流しでもしてようかな


空になったボール籠をがらがら引いて
コートに落ちてるボールを回収



みんなそれぞれ。
やるべきことを積み重ねていく。


改めて、俯瞰で見る

これだけやったら勝てる、とか
どれだけできるようになったら優勝、とか
保証なんてあるわけじゃない


けど、
みんな一生懸命だ






つい、足と手が止まった


「なにぼーっとしてんの。さ、自主練自主練!」
『えっ?ちょっ、鉄朗さん?!』
「ちょっと付き合ってよ」
『いや、でもっ』
「大丈夫だろ自主練なんだから。はい。行こう」



二の腕をもはや引きずられるように
私は転ばないように足を動かすので精一杯

体育館を出る間際に鉄朗さんが大地さんに
ぎょーざちゃん借りるなーって
は?おい!
ってころにはすでに姿は見えなくて、声しか聞こえなかった。



『拉致ですよ、これ』
「ははっ。間違いねーな
でも、そんな怒んなって」




第三体育館



近くにつれて奇声が聞こえる



「ほら、皆待ってるから」
『皆って、』


この声あの人だ
梟谷の


「はい、到着」


連れてかれた体育館には2人しかいなくて


「ヘイ!来たな!バレーがめちゃくちゃ上手いマネージャー!」
「木兎さん、呼び方最悪ですよ」

木兎さんがごめん、と
セッターの、


『…烏野高校1年の焼きぎょーざです。マネージャー、です』
「ぎょーざ!いい名前だな!」


…どこのアニメの登場人物だよ、みたいなセリフ



「俺は木兎!で、これは赤葦」
『どうも、よろしくお願いします』

また赤葦さんが木兎さんがごめん、って



『あの、自主練どうぞ。私ボール拾いしてればいいですか?』
「え?お前もやるんだよ?」

『え?』
「え?」


ふざけてる鉄郎さんの腕を思わず叩いた。


「なーに今の。かわいいんですけど」
『 まじめに聞いてるんです!』
「ボール拾いながらやればいーじゃん!やろー」
『いや、でも』
「いつもより動いてないでしょ。動き足りないでしょ。本当はやりたいんでしょ」
『う、』


鉄朗さんの言う通り、なのかもしれない。
動き足りないからダッシュしたくなったのかも…


「やろーぜやろーぜ!ほいっ」


ボールがポンっと手元に飛んできた
反射的にキャッチしてしまった



「セッターだっけ?トスあげてくれよ」
『で、でもセッターは赤葦さんが』
「ほ、ほら!赤葦も一人だと疲れちゃうだろ!」

なっ?なっ?
とせわしなく動く木兎さんに動じない赤葦さん。



「そうだな…無理にとは言わないけど、いてくれたら俺は楽しいかな」


ずるいな、この人
強要しないよって表向きだけど
断りにくい、いや
断れない


『わかりました、お邪魔でないのであれば…やります』
「そうこなくっちゃな」




東京の強豪
しかも先輩たち

独特な雰囲気に流されてた私は

この後
通りかかった蛍くんも道連れになることを予想なんてしてないるはずがなかった。







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