幸せの温度
□U
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昨夜の晩から降り始めた雪は朝方まで降り続いていたようで、街中には薄っすらと白い絨毯が敷き詰められているようだった。
ア「雪、積もった。」
フリルのたくさん付いた赤い服を着た少女、櫛名アンナは、隣を歩く赤の王周防尊の上着のポケットを掴んで歩きながら小さく言った。
まだ9月なのに降った、季節外れの雪は、ニュースになる程騒がれたがアンナはそんな事は気にもとめていなかった。
尊はああ、と同じく小さくしかしアンナとは対照的な低い声で答えた。
ア「でも、お昼になったらきっと、溶けちゃうね。」
周「…ああ。」
二人は無言で歩いていく。
無言なのにアンナはどこか楽しそうに尊の横を歩く。
ふとスカートのポケットから赤いビー玉を取り出した。
それを自分の目の前にかざし、ビー玉越しにあたりを見渡す。
ア「…!」
ビー玉越しの世界を楽しんでいたアンナが何かを見つけて立ち止まった。
掴まれてた尊も気づいて止まる。
ア「あれ…」
アンナが小さく指差す。
尊がああ?とゆっくりとアンナの指差す方を見た。