幸せの温度
□V
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少ししてから十束が、桶とタオルを持って部屋に戻ってきた。
その後ろにもう一人男がいて、ハルはびくりとした。
ア「大丈夫、怖くないから。」
アンナが気付いて小さく言う。
十「おまたせー。」
草「目が覚めたようやな。」
関西弁の男は手にやかんを持って言った。
桶にやかんのお湯を入れると温かな湯気が立ち上る。
草「俺は草薙出雲ちゅうもんや。
よろしくお願いしますわ…」
草薙は言い淀むとアンナが、静かに言った。
ア「ハル。」
十「ハル?アンナ、名前を聞けたの?」
ア「名前くらいしか、見えなかったけど。」
草「ハル言うんか。よろしゅうな。
ほな、わいは下に戻ってるから、何かあったら呼んでや。」
十「分かった、ありがと草薙さん。」
そう言ってひらひらとハルに手を振りながら草薙は部屋を出て行った。
十「さて、ハルの身体をタオルで拭いてあげようと思ったんだけど…アンナの方が良いかな?」
アンナはぴょん、と椅子から降りて桶から絞ったタオルを受け取った。
十「…でも俺も手伝った方が良さそうかな。ごめんね、こんな男に見られたくないだろうけど…」
十束は申し訳なさそうに言って、ハルをゆっくりとベッドに座らせて、服を脱がせた。
少し動かすたびにハルは痛みに顔を歪めた。ハルの素肌が露わになって、2人は息を飲んだ。