幸せの温度

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数日後、何時ものようにバーには八田たちも集まって賑やかになっていた。

ハルも数日の間に八田たちに慣れたらしく、びくびくとする事も無くなっていた。

雨なので外に出られない八田や鎌本たちは楽しそうに話している。
横では、アンナは十束の話を聞いている。

ソファに周防が座っていて、ときおり十束が話を振ると気だるげに答えていた。

ハルはそんな様子をカウンターに座りぼんやりと眺める、それがここ最近の日常だった。


その日、ハルはそんな様子を眺めつつ、ノートを広げてペンを動かしていた。

カウンターでグラスを磨いていた草薙はそれに気付いて声をかけた。


草「何書いてるん?」

ハルは集中しているようで、その声に気付かなかった。

耳にかけた髪がさらりと顔の横に落ちる。

草薙がそっと手を伸ばしてその髪を耳にかけてやると、ハルは驚いて顔を上げた。

その時ノートに書かれていた物が見えて、今度は草薙が驚いた。

草「ハル、そんな才能あったんか。」

ノートには少女の絵が書いてあった。
真っ白な髪の少女、アンナだった。

アンナも気付いてやって来て、ノートを見て驚き、嬉しそうな顔をする。

ア「ハル、これ私?」

ハルはこくん、と頷いた。

十「へー、似てるね。俺も一時期絵にハマってたんだったけどさ、全然ダメだったんだよねー」

いつの間にか八田たちも集まっていて、感心したように見ていた。

八「な、ななんだよ」

ハルがじっと八田を見つめると、八田は顔を赤くして言った。

十「八田照れてるの?」

八「て、照れてないっすよ!」

そう言っているうちにハルが書いたのはちょっと照れた顔をした八田だった。


八「に、似てるけど、俺こんな情けねえ顔してねえ…!」

伏「いや、そっくりだろ…」

伏見がまじまじと絵と八田本人を見比べて言った。


こうして意外なハルの特技が発見されたところで昼間の時間が過ぎていった。


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