幸せの温度
□X
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既に辺りは明るくなっていた。
一晩中走り続けたハルは、やっと見えた森に息をついた。
森の手前に一軒だけ、建物が建っている。
大きくも、小さくもない建物。
正面から入って行ったらすぐに見つかるかもしれない。
ハルは自分が出てきた裏口へと回る。
振り返ると、丘の上からは広がる街並みが見える。
少しの間だったけど、温かい気持ちにしてくれた場所。
きっと、これで最後。
ハルは、静かにドアを開いた。
一歩入ると、むせ返るような死臭が漂う。
そこには変わらず仲間たちの死体の山。
『……』
復讐に、来たよ。
ハルは心の中でそう言って、死体の山の横を抜ける。
反対側のドアを開けると廊下に人はいなかった。
近くに人の気配はしない。
足は自然と実験室に向かっていた。
施設の中は、何故か人の気配が無く静まり返っていた。
誰とも出会うこと無く、実験室の前まで辿り着いた。
そっと、部屋の外で中の気配を伺う。
何者かの気配が、確かにある。
ハルは心臓がどんどん早くなっていくのを感じた。
手を握る。
力はもう回復している。
奴らに復讐をするんだ。
ハルは思い切って、ドアを開けた。