BL

□秋
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寒い日


土銀


歩いていて少し離れてしまうとすぐに振り返って手を差しのべてくる。
俺はそんな馬鹿に向かってどんだけ俺が好きなの。といつも笑って差し出される手を取っていた。俺もテメェも男だろうに、っていう台詞は言わない。きっとクサい台詞が返ってくるんだろう。
少しずつ肌寒くなってきたこの時期にコイツの体温は心地よく、じんわりと手から温もりが拡がってきていた。握る力を抜くとその分向こうが力を強めてくる。本当、恥ずかしい奴だ。
いつ離れていくのか分からないこの手を、今は大事にしてもいいと思っていた。


「お前も残念だけど俺も大抵残念だよなぁ…」

「あ?」

「なんでもねーよ、この銀さん大好き魔め」

「おう」

「…………そういうとこが残念なんだよ…ま、いいけど」


真顔で言うこの馬鹿に、少しは同じ分を返してやろうと寒さで赤くなっている耳元へ囁き掛けた。


「な、   」



 "すきだ"





 
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