目覚めた少女
□8話
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酒場を逃げ出したヴェレは1人で歩いていた。
辺りを確認することなく、ただひたすら走っていたら、いつのまにか知らない場所まで来てしまっていたようだった。
けれど、ヴェレはそのことを気にする余裕もなく、ただ海賊だというシャンクスと、そのシャンクスに笑いかけるルフィの顔を思い浮かべていた。
「なんで・・・。海賊なのに・・・」
ヴェレがうつむきながら歩いていると、ドン、と何かにぶつかった。
ヴェレが驚いて視線を上げると人の足があった。
人にぶつかったのだと気づいたヴェレは「すみません、」と謝ろうとし、固まった。
ヴェレはいつの間にか見覚えのない港に来ていたようだった。そこには柄の悪い男たちと、海賊旗を掲げた船が停留していた。
「ひっ」と小さく息を吸ったヴェレに、船長と思しき男が「捕まえろ」と小さな声で言った。
咄嗟に逃げ出そうとするが、それも空しくすぐに捕まってしまう。
「海軍に連絡でもされちゃあ困る。おれたちはここにただ食料を貰いに来ただけなんだ」
「なぁ」と言って、船長と思しき男はヴェレの顔を覗き込んで不気味に笑う。
「い、いいま、せん・・・。海軍に、連絡、しません、だから・・・」
なんとか声を絞り出しそう言うも、男たちは表情を変えない。
「悪ぃな、そいつは信じられねぇ。・・・おい、物置にでも閉じ込めとけ。少しは金になるだろ」
男の言葉に、他の男たちが動きだし、慣れた動作でヴェレを気絶させた。
・ ・ ・
その頃、マキノから事情を聞いたルフィはヴェレを探しに行こうとしていた。
「ルフィ・・・」
「良い海賊だっているんだ。ヴェレはそれを知らないから、だからおれが教えてやるんだ」
そうルフィが意気込んでいると、酒場の扉が勢いよく開いた。
「た、大変だ!ヴェレちゃんが!」
・ ・ ・
「う・・・」
暗い部屋で目を覚ましたヴェレは、起き上がろうとして両手足が縄か何かで縛られていることに気づいた。
口にも布が巻かれ、声を出すことができない。
―――閉じ込めとけ。少しは金になるだろ。
「う・・・」
気を失う前に聞こえてきた言葉を思い出し、ヴェレは涙を浮かべた。
(やっぱり、海賊なんて、みんな同じです・・・。海賊なんて・・・)
ヴェレがそう思って諦めかけたとき、突然外が騒がしくなった。
「ヴェレ!!」
扉が勢いよく扉が開かれ、ルフィが叫ぶようにしてヴェレの名前を呼んだ。
「い、今外すからな!」
ヴェレを見つけたルフィは急いで##NAME1##に駆け寄り、縄を外した。
「る、ルフィ・・・」
「シャンクスたちが来てるんだ!」
ルフィが誇らしげに、ニッと笑った。
「ルフィ、お姫様の救出は終わったか?」
そう言いながら入って来たのは、シャンクスだった。
「ぁ・・・」
ヴェレの無事を確認すると、「少し離れた所でマキノさんたちが待ってる」と言い残し、シャンクスはまた外に出て行った。
「行くぞ、ヴェレ!」
ルフィはヴェレの腕を掴むと、一目散に船から出て、マキノたちの待つ場所まで駆けて行った。
「ヴェレ!!」
マキノがヴェレを抱きしめると、緊張が解けたのか、ヴェレが大きな声で泣き出した。
「ご、ごめんなさい・・・!」
「無事で良かった!」
その後、ヴェレを襲った海賊はシャンクスたちの手によって倒され、ヴェレはその日はもう家に帰ることになった。
・ ・ ・
翌日。
「ルフィ、あの・・・」
「ヴェレ!シャンクスのところ行こう!」
いつもの笑みを浮かべ、ルフィはヴェレに手を伸ばした。
「っはい!」
ヴェレもその手を取り、ルフィと一緒に駆けだした。
・ ・ ・
カラン、と軽快な音を立て、酒場の扉が開かれる。
「おうルフィ、今日も来たのか」
中で迎えるのはシャンクスとその仲間たち。
奥ではマキノがいつもの笑みを浮かべている。
ヴェレはスカートの裾をぎゅっと握り、勢いよく頭を下げた。
「ごめんなさい!」
その様子にルフィもシャンクスも驚いたように目を見開く。
「な、なんだぁ?どうしたんだよ、ヴェレ」
「昨日、失礼なことたくさん言って、ごめんなさい。・・・それと、助けてくれて、ありがとうございます」
シャンクスをまっすぐに見つめて行ったヴェレに、シャンクスはきょとん、と目を瞬かせた後、笑って「気にするな」と言った。
「ルフィも、昨日は急にあんな態度とってごめんなさい」
「おう!気にすんな!」
にしし、と笑うルフィに手を引かれ、ヴェレは店の中へと足を踏み入れた。
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