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□正月の積雪 龍如
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『わあああ!』




ゆみの叫び声が聞こえた
正月だってのに何なんだ、少しはゆっくりさせてくれ――――、


「!!!?」


窓から外を見ると、神室町が真っ白だった。
最低1階までは白いもので埋まっている。


「ゆみ!?どこだ!」


外から聞こえたから、もしかしたら埋まっているかもしれない。
だとしたら大変だ。


『―――――、――――!』


「あ?なんだって!?」


白いもの…雪だなこれ。

雪の中かから声がするのは確かなんだが、まったく何を言っているのかがわからない。

とにかく、降りるしかないな。
地道に雪をかいていけばゆみのもとへたどり着くだろう。
神様だからそう簡単に死なないだろうし。



「…あ。」



そうだ、アイツ神様だろ。



「おい!お前この雪溶かせないのか!?」


『――!』



多分、あ!とでも言ったのだと思う。
ゆみのいるであろう所から赤い光が漏れてきている。


ぱんっ、


すると瞬間で雪が消えた。




「!!」

『え、えへへ…』

「…ったく。」



仕方がない。ゆみのもとまで行こう。
階段を下りて、玄関で上着を羽織る。




「お前は何を正月からしでかしてるんだ」

『埋まっちゃった!』

「バカか!」



神様であるとかそんなの関係ない。
それに間違いない。こいつは正真正銘のバカだ。



「何故ああなったんだ。」

『はぇ?』

「……。」

『うっ!ごめんなさい…』

「…。」




ゆみが言いにくそうに口を開いた


『え、えっと…雪を降らせようと…思って…。』

「は?」



そんな好奇心であんな事になったのか。
…まったく、何をしているんだか。



『この間、ニュースで今年は雪降らないって言ってたから…。』

「…で?」

『う…元日の日に桐生ちゃんに雪を見せてあげようと思って…。』



…。
なんだ、好奇心で動いていたんじゃないのか。



『っ!!』


ぽんぽんとゆみの頭をなでる。
顔が少し赤いのは照れているからだろう。


『きっ桐生ちゃ…!』


そんなゆみに追い打ちをかけるように抱きしめる。
髪の毛がびしょびしょだ。服も濡れている。

にもかかわらず、まったく震えていないし温かい。



「…ありがとうな、」


『…えへへ…。』





「おっちょこちょいの神様。」






ニヨニヨしていたゆみが一瞬で固まった。
腕の中でそれが伝わるから面白い。




『なんだと―!!』



あ、怒らせた。
悪い、悪かったって。


END

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