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□正月の蜜柑 東方
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「もう、アンタ何個目なの?」

「えっと…えーっと、17個目だぜ!」

「全くもう…。」




魔理沙が神社に上がり込んでは、持参したみかんを貪りだした。
というか、みかんが次から次へと出てくるのはなんで?

ニコニコと、止まらず一定のスピードで食べ続けているのが不思議でならない。



「みかん、飽きないの?」

「そんなに気になるんなら霊夢も食べようぜ!」



ぬっ、と魔理沙がみかんを差し出してくる。
魔理沙が来る前に朝食を済ませてしまったから、正直みかんを見ても吐き気がこみ上げてくるだけだ。
それにまだまだ沢山あるし、あれを全部食べなきゃと思うと…。うぇ。



「私は遠慮しておくわ。お雑煮食べてお腹いっぱいなの。」

「ゲホッゲホ!お雑煮があるのか!!?」


17個目のミカンをごきゅっ、と飲み込んでしまったようだ。
みかんよりお雑煮の方がいいのか。
お前の胃はどうなっているんだ。胃下垂か。



「…あるわよ。」

「じゃーあ!私がおいしくいただくことにするぜ!」

「…しょうがないわね、ちょっと待ってなさい。」



少し冷えたお雑煮をもう一度温める。温めているうちにモチも焼いてしまおうか。
お椀と箸をお盆の上に置いて、準備は万端だ。あとはお雑煮を注いでモチをのせるだけ。



「れーむー!まだかー?」



奥の方から魔理沙の声が聞こえてくる。
3分もたっていないのに「まだ」はないだろう。どれだけお腹が空いているんだ。



「暇なんなら神社の前の雪かきしてちょうだい!」


そうすれば私の仕事も減るし、ゆっくり正月も過ごせるし、初詣にも人がたくさん来る。
良いことの連鎖じゃない。魔理沙のヘンな減らず口も聞かなくて済むしね。


「イヤだ!霊夢と同じ空間にいるんだー!」

「何バカなこと言ってんの、融雪機なら裏の倉庫にあるから。」

「うー!これでもダメか…。」

「いいから早く…」

「ゲホ…ゲッホゲッホ。霊夢実は…私不治の病で…どうしても雪かきはできないんだ…。」


…。


「じゃあお雑煮はナシね。」


うわーん、霊夢の鬼畜ぅ。


何か変なものが聞こえてきたけど。そうね、小鳥のさえずりね。
魔理沙とやり取りしてるうちにモチがいい感じに膨れてきた。


「そろそろ回収時かしら。」


お雑煮の方もグツグツといい音を立てている。
あ、何も混ぜていなかったけど、底の方こげてないかしら…?


「うん、大丈夫そう。良かった。」



鍋に蓋をして、モチを冷えないように鍋の近くにおいて、魔理沙のもとへ行った。
縁側で鳥居のあたりを掃除している魔理沙はすごく一生懸命だった。


「…。」


何をするにも中途半端にはしないのね…。
努力家という言葉は、魔理沙にはぴったりだ。

すると、魔理沙が私の姿に気づいたようでこちらに手を振ってきた。
私も、それに対してやんわりと手を振った。


ある程度の時間眺めてから、お雑煮を注ぎに戻った。
それから、私が縁側からいなくなってから間もなく、魔理沙が戻ってきた。



「れーいむ!終わったぜー!」

「あらそう。こっちも準備できてるわよ。」





お雑煮を頬張る魔理沙を見て、なんだか和んだ。




「あれ、そういえば魔理沙。」

「なんだー?」

「アンタみかん食べてなかったっけ?」

「あー、食前のおやつか?」

「!!?」

「最近、魔法の研究であまり食わないでいたから体重も落ちててさ。食前にみかん食って太らせてるんだぜ!」

「あ…そう。」



あんまり面白くない理由で変なオチになったわね…。



「アリスに貰ったんだぜ!気が利くよなー!」




ピクッ




「 ア リ ス … ? 」

「えっ!え、あ、え、と、そうだぜ?」



アリスから貰ったみかんを堂々と私の前で食べてたのね。
しかも17個も…。アリス…いい度胸じゃない!!!



「ちょっと用事を思い出したわ!殺してくるわね!」

「待て!殺しちゃらめぇぇぇ!」





END

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