*生前*
□生前2
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丁は、悩んでいた。
この事を、彼女に言うべきか?
いつものように仕事をこなし、いつものようにあの場所で彼女を待とうと思っていたが
仕事が終わった直後、主人に
「1ヶ月後、お前を生贄に捧げるからな。恨むなよ」
と言われたのである。
もし言ってしまえば正義感の強い彼女は村長に頼み込むだろうが、
きっと何かしらのお咎めや周囲の偏見がありそうだ。
それは避けたい。
だから、ギリギリまでは言わないようにしようと決めた。
丁「すみません、遅くなってしまって」
貴「全然!珍しいね」
丁「少し長引いてしまいましてね」
時が来るまでは、いつも通り接するだけ。
きっと、彼女と会わなければ生贄となり死ぬことも
なんとも思わなかっただろう
(恨みはするが)
だが、今はまだ死にたくないと思う自分もいる。
まだ一緒にいたいと思ってしまう自分がいる。
"丁"である限り、本当はゆるされないことなのに。
その夜丁は初めて静かに涙を流した