*生前*

□生前3と注意
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いよいよ村は忙しそうにしてきた。
それは丁の死も近いということで。


大人たちは完全に出払っているようなので、一日中2人は会うことができた。


貴「やっぱり、間違ってるよ」


丁「…でも、これしかないのです。」


貴「神様も、喜ばない」


丁「私は、孤児だから。」


貴「貴方が死ぬ理由はない」


丁「私には生きる価値がない」


売り言葉に買い言葉とはまさにこの事か

説得しようとするも、どこか自分に言い聞かせているような丁には届かない。

自分の非力さに、六弐は眉を寄せた。


丁「そんな顔、しないでください。
暗い顔は似合わない。
私には、貴方には…六弐は笑っていてほしい」


貴「…うん」


丁「自分のしたいことをして、幸せに暮らしてほしい。」


貴「……うんっ…」

だんだんとぼやけてくる視界の中で、なんとなく
丁の目元も赤くなってきている気がした。


丁「だから、泣かないで。」


貴「…丁は、泣いてるの?」


丁「いいえ。泣きません。」


貴「嘘。目元だけじゃない。声も震えてる」


だからね、かなしくてつらいときはないてもいいんだよ。

そう言った途端、彼の目からぶわっと涙があふれた。

ふわっと彼の香りに包まれて、抱き締められているのに気付く。


丁「ずっと…ずっと、私は
生きるために耐えて、耐えて…
辛かっ、た!死にたいって思うこともあった!」


貴「うん」


背中に手を回してみる。身長に合わず、痩せていて今までの辛さを物語っていた。


丁「でもっ…!貴方に、六弐に会えた…!一緒にいるだけで嬉しかったのに…
もう、それもできなくなってしまう」


貴「…!」


丁「それが、酷く、悲しい。」


思わず背中に回した手に力を込めてしまった。
痛くないだろうか?でも、向こうも力を入れてきたからいいよね。

いつの間にか、自分もぼろぼろと涙を流していて、

丁と会えなくなることがこんなに辛いんだ、それよりも


こんなに、
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