HQ/影日

□お返しフランボワーズ
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「………!!!」
日向は見てしまった。


「…………してね、影山くん」


「……ああ、わかった」


「あと……これ、渡しとくね」


「おっ、サンキュー」


「じゃあ、明日よろしくね〜」


「おう、またな」


影山が親しく女子生徒と話していることを。



【お返しフランボワーズ】



日向がこんなことになったのは、なにげないことからだった。


その日、日向はクラスの日直だった。

烏野高校ではさまざまな決定をクラスに基本的には任せている。

日直の期間もその1つである。

日向のクラスでは日直の期間は日直当日の朝から放課後までとなっているが、
別クラスの影山は日直前日の放課後から日直当日の放課後直前まで
というようにクラスの担任の違いで、細かな違いが発生する。

日直の仕事も、
日向は日誌記入、朝・帰りのちょっとした会での司会、放課後の掃除が主だが、
影山では、日向の仕事にプラスして予定記入、教室の鍵管理もこなす。

それに並行して、日向のクラスは基本1人で仕事を行うが、影山のクラスは2人で仕事を行うという違いもある。

そのため、同じ日に日直になっても、日直当日に遅れることはないのだ、といつか影山が言っていたのを日向はぼんやりと聞いた。


放課後の掃除を手早く終えて、さあ帰ろうとしたところ、昇降口に影山がいた。

そこには同じクラスなのだろうか、女子生徒も一緒だ。

すぐさま他の学年の靴箱に隠れ、様子を窺う。

すると、前述のような会話が聞こえてきたのだ。

影山のスタイルや顔立ちは普通の男子のそれより、基本的イケメンな部類に入るので、烏野女子の密かな的でもある。

日向とは違い、女子から告白されることもよくあることだろう。

日向の頭の中にはいつしかちらっと見た青春ラブストーリードラマの情景が広がる。


噴水沸き上がる公園。
人気もそこそこある中で、手を繋いで歩く2人。
その顔は幸せそうだ。

そんな2人をエキストラに紛れながら見る自分。
さぞかし忌まわしげに見ているだろう。


唯一無二の相棒であり、愛人でもある影山に捨てられたと思うとふつふつと怒りが沸いた。

怒りに任せるということは怖いもので、気がつけば身体が勝手に動いてしまっていた。


「お、日向。お前も日直だったのか。時間合ったし、いっしょに……」

「……いい、一人で帰る」

「はあ?時間が合ったら一緒に帰ろうって誘ったのはおめぇじゃねーか!」

今日は時間が合い、一緒に帰る数少ないチャンス。
貴重なタイミングを逃さないよう、自分から誘っていたのだ。

「いい、ったらいいんだよ!!!!」

日向は怒りのまま影山の元から駆け出す。


「……ひなた…」

影山は夕日傾く昇降口で、ぽつりと呟いたのだった。



*

そのようなことがあったからか、2人の間には溝ができ始めていた。

先輩方だけはなんとか隠そうと平然を保っていた。


その中で常々日向は考え込んでいた。

先日の影山のあの光景について、真実を求めるべきか…と。

冷やして考えると、日向自身は影山のあの光景を見てから…怒りを露にして、ただ逃げていただけだったのだ。

影山を振り回してしまった。

ただ、嘘だって言ってもらいたかっただけなのに。

愛しているのはお前だけだって言ってもらいたかっただけなのに。

それが空回りしただけだった。

自分から影山に直接。そう決心した。



「…おい!ちょっと、はなせ!!」

早速、日向は影山を半ば強引に連れて、特別教室棟へ行く。

「おい、なんか言えよ!」

「…………」

「なあ!!」

移動中、日向は頭の中で影山に伝える言葉を整理していたため、「うん」ともすんとも言わず黙っていた。

そしてそのまま音楽室へ入る。

元々部活がない日のせいか、辺りは静まり返っている。

「なあ、ほんとに……!」

「…………」

トン、という音とともに、影山は黒板に押さえ付けられる。
日向は影山の腕の両端に手を付けていて、端から見れば覆い被さっているように見える。

「……ずっと、さびしかった」

「かげやまが、おれから、はなれていくのが…おれを捨てることが…」

とっても、つらかった。
その声は酷く掠れていた。


「……ひなた、どうし」

「…おれ、見た」

「昇降口で女子と話してたとこ」

「………っ…!?」

「あれ見たら、影山がおれをすてたかもって思って…おれは…おれは……」

日向が言い終わる前に、影山に手を引かれる。

そして気づいたときには視界が反転し、目の前には影山の顔があった。

「……な、なに……」

「…俺、お前のこと、そんな目で見てねーから」

「お前を捨てないし、お前から離れないから」

「どんなに嫌がってでも、俺は日向しか愛してねーから…」

「…………!かげやまぁ……!!」

急な告白に涙が溢れる。
影山は、元の影山だった。
誰のものでもない、自分だけの影山。
ただただ、それだけで嬉しかった。


「……ところで、なんでこんなことになったんだ?」

「……え?」

「いや、なんでこんなこと起きたのかなぁ…って」

「……だって、影山、女子に親しく話してて…」

「あー、あいつは日直で一緒になった奴」

「………へ??」

「一緒に残って、日直の仕事してたんだ」

「…帰るときに、日直での自分の分担のメモ貰ってた」

「え…え…うえええええええええええ!!?」
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