短編

□犯罪者レベルなグリーンさん
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「ナナシー、居るかー?」


「.....居るけどちょっと待て。なんでグリーンがここに居る。どうやって入ってきた」


「玄関からだが?」


「今親居ないし鍵閉めてたけど」


「鍵で開けた」




決まってんだろ?と言いながら指で摘んで見せつけてきたのは確かにうちの鍵。


思わずベッドの上で頭を抱えた



.....これじゃあ家でも落ち着けないじゃないか....




「てかまずなんでグリーンがうちの鍵持ってんのさ.....」


「この前お前からくすねた」


「鍵なくなったと思ったらやっぱり犯人お前か!この窃盗常習犯め!」


「なんだよ、俺等の仲だろ?」


「幼馴染だからって人の家の鍵勝手に盗むな!てかグリーンが私の物盗むの何回目だよいい加減返せよもうほんと!」




早口で言ってのけ、変態で窃盗常習犯な幼馴染のグリーンを見る。こいつが私の物を盗むのは、今回に限ったことじゃないのだ。


この前はヘアピン、その前はTシャツ。Tシャツの前はくつ下だ。その他にも色々とグリーンに盗まれてなくなった私の私物。ちなみにそれらは返してもらえてない。



まぁ、下着を盗られてないだけマシだが、まさか家鍵を盗まれる日が来るとは思ってもいなかった。もう立派な窃盗罪だぞこれ。通報しない私ってほんと優しい幼馴染だよね、ほんと。




「んで?何しに来たの」




おまけに追い返さない私は甘いんだろうな。だからこの変態に色々と盗まれるんだ。ほら、今だってグリーンが堂々と物色して.....物色、して.......




「って堂々と何してんだお前!?」


「何って物色」


「わかっとるわ!何堂々と本人が居る目の前で盗もうとしてんの?!凄い勇気だね!尊敬に値しそうだわ!」


「別に尊敬していいんだぜ?」


「しそうなだけでしねぇよ。窃盗犯のことなんか。てか物色やめろよ.....」




なんだかどっと疲れて背中からベッドにダイブする。こんな奴がトキワのジムリーダーとか勤めちゃってていいの?

加えて女の子達から人気あるみたいだけど、私にはその女の子達の気持ちが全く理解できない。こんな変態のどこがいいんだ。.....確かに顔がいいのは認める。だけど性格はどうだ。変態だぞ、変態。おまけに犯罪者と言えるぐらい一人の女の子の部屋を堂々と物色して物を勝手に盗むような奴だぞ?


そしてその女の子がベッドに横になってるのをいいことに、その上に馬乗りになるような奴だぞ?




「何してんだ変態」


「見てわかんねぇのか?馬乗りになってんだよ」


「そんなことわかってるわ。なんで馬乗りになってんのか聞いてんの」


「お前がすぐ近くでベッドに横になってるんだぞ?何もしない方がおかしいだろ」


「そうだね、おかしい。付き合ってもいないのにこの状況はおかしいよね」


「.....、」




うん、ここでグリーンが黙るのは想定内。

だっていつもそうだから。なんでこんな事をするのか、自惚れだと思うけど私には察しがついている。
だけどグリーンは自分から何も言わなければ私がこうしてほのめかすような事を言っても答えてもくれない。いつもね。


悔しいけどさ、私はこんな変態のような窃盗常習犯な幼馴染のグリーンのことが好きなんだよ。だからいつも....私物を盗まれようがなんだろうが通報しなければ勝手に部屋に来ても追い返しはしなかった。....怒りはするけど。



私はそろそろグリーンが私にこんな事をしてくる理由を、グリーンの口から聞きたいんだけど。


.....まぁ、今日もどうせダメなんだろうけど。




「グリー「俺は、」.....!うん?」


「俺等は、確かに付き合ってねぇ。ただそれは、俺が馬鹿で臆病なだけだ」




....臆病?グリーンが?いやいやいや。堂々と本人が居る目の前で部屋を物色できてその人に馬乗りできる人が臆病だなんて言わないわ。


.....いや、まぁ、うん。
グリーンが言ってる臆病はもっと違うところでの臆病だってことはなんとなくわかってるよ。だから口には出さなかった。自己満足的な感じで心の中で呟いただけ。


なんて考えてる時もグリーンは私の上に乗ったままだ。そしてずっと目が合っている。こんなにグリーンと目を合わせ続けたのはいつぶりだろうか。




「.....なぁ、お前は男に馬乗りになられてんのに抵抗しねぇのかよ」


「んー、グリーン以外にされてんのならとっくにしてるね」


「.....、っ.....」


「え、ちょ、グリーンさん?」




黙り込んだあと急に首元に顔を埋められてもどうすればいいのか私にはさっぱりなのですが。急にどうしたよグリーン。




「それは、逆に言えば俺だから抵抗しないってことでいいのかよ?....もしそうなら俺、期待するぞ?」


「.....どうぞ期待してください」


「....俺....、」




次に聞こえた言葉は、私がずっと聞きたかった言葉




「お前のことすげぇ好き」




耳元で囁くように呟かれた彼の気持ちに、私はすぐに返事をした




「私も好きだよ、グリーンのこと」







「今まで盗られた物の事とかは水に流してあげるから、もう物色とか盗むのはやめてよね」





周りから見れば紳士でイケメンなグリーンだけど、私には犯罪者レベルな行動をとるグリーン。そんなグリーンの行動を結局は許す私はどうかしているのかな?







(約束だよ?)


(お前が俺のもんになったからもう何も盗らねぇよ)





.....初めから私を盗めばよかったんじゃない?

なんてクサいような言葉は言わないでおこう
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