Lost in Blue

□歴史の闇に葬られた真実
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「マスターが俺のもう一人の親?」

驚いた様にそう言うと、ウイリアムは珈琲マグを手にもったまま固まっていた。

「スネーク。君が君自身のルーツを探してると聞いてな。独自に“恐るべき子供達計画”当時の極秘資料を入手し、その記録にはそう記載してあった。念の為、DNA鑑定で裏もとって事実は確認済みだ」

そう言うとキャンベルは資料をテーブルへ広げる。
その資料を手にし、目を通したのはオタコンだった。

「そんな。でも何故、ビック・ボスとマスター・ミラーの遺伝子を?」

全てを読み終えるとオタコンは混乱する様にキャンベルへと問い掛ける。

「恐らくゼロも薄々は感じていたのだろう。ビック・ボスを越える存在を創るには誰の遺伝子を掛け合わせるべきか、を…」

そう言うとキャンベルは深い溜め息を漏らした。

「ちょっと待ってくれ、色々と僕には理解できないんだけど?」

キャンベルの言葉にウイリアムも納得した様にしているのを見て、オタコンは意味が解らないとキャンベルへ更に説明を求める。

「ミラーは“アウター・ヘヴン”の前進となる“国境なき軍隊”をビック・ボスと共に立ち上げ、スカル・フェイスの妨害を受け一時は壊滅状態にまで追い込まれた。だが、瀕死の重症を負い9年間療養していたビック・ボスに代わり“ダイヤモンド・ドックス”という新たな組織を建て直し、更にはビック・ボスの復帰直後、彼の伝説を取り戻させた」

マスター・ミラーの隠された経歴を口にするキャンベル。

「成る程、ゼロもマスター・ミラーの能力を認めていたという訳か。でも、そんな理由で敵対する男の遺伝子を得ようとするかな?それだったら、IQの高い女性を選別すればずっと簡単だった筈だ。何でわざわざ男であるマスター・ミラーを?」

しかし、オタコンはそれで納得する程単純ではない。

「…………親父に俺達を殺させない為だろ、大佐?親父はマスターに執着していた。怖い位に…。だから、マスターの遺伝子を組み込む必要があったんだ。そのお陰かは解らないが、俺は親父に殺される事はなく、マスターに育てられた」

ウイリアムが今まで接して来たビック・ボスとマスター・ミラーの関係を独自の見解で述べるとキャンベルもそれに賛同する。

「………恐らくは、な。それにビック・ボスはリキッドもミラーに育てさせようとした様だ。一時期、リキッドはダイヤモンド・ドックスで保護され滞在していたが、保管していたメタルギアと共に姿を消し、数年後ビック・ボスに合流して直々に軍事教育された様だ…」

調べた限りの情報を口にするキャンベルにウイリアムは視線を落とした。

「それはビック・ボスがマスター・ミラーに向ける“絶対の信頼”ってヤツかい?」

あくまでも友情による健全な強い絆の元で交わされたモノだと言う過程で話をするオタコンに、ウイリアムは苦笑して首を横に振る。

「いや、あれは執愛だ。無理矢理、親父がマスターを犯してるのを見た事がある。親父はマスターにザ・ボスの面影を見て執着し、その能力と人柄を愛したって所だろうな。マスターにとっては迷惑な話だが…」

さらっと確信に迫る様な爆弾を投下するウイリアムに、キャンベルは慌ててオタコンを見ると彼は困った様に納得した様な表情をみせた。

「…………そうでもないさ」

そう言って部屋へ入って来た男は切なげな笑みを浮かべている。

「────ッ、マスター!?」

驚いた様に見上げてくるウイリアムにカズヒラは困った様に微笑む。
ダイヤモンド・ドックスを立ち上げ運営していく中、カズヒラはビック・ボスへの敬愛は薄れ、ウイリアムと同様に救うべき人に変わっていた。
畏敬の念でも、況してや恋情や友情とも違う感情。
例えどんな仕打ちをされようが、それに寄ってカズヒラがビック・ボスを心底憎む事は無かった。
ただ“蛇達の解放”を目指し、カズヒラは戦い続け、その為の相棒として選んだのはヴェノムであり…
ヴェノム亡き後はオセロットに頼った。

「ウィル、差し入れだ」

そんな感傷に浸り、苦笑しながら手土産の菓子を差し出すと何かを察知したかのようにウイリアムは眉間に皺を寄せる。

「ミラー、今の話…」

困った様に問い掛けてくるキャンベルにカズヒラは悪戯な笑みを向ける。

「…………聞いてたさ、全部な。聞かれて不味い話をする時は戸締りをちゃんとするべきだろう、キャンベル?」

口角を上げ、弓形にした口元で人好きするが感情の読めないカズヒラの言葉にキャンベルは更に困った様な表情を浮かべた。

「…………………う、まぁ。そうだが……」

タジタジといった感じのキャンベルにカズヒラは言葉を付け加える。

「……それに、全部知っている事だ。皮肉な事に特に俺は“愛国者達”の情報を労せずとも手に出来ていたからな…」

そう言ってカズヒラは悲しげな表情を浮かべた。

「「「………え…?」」」

驚愕する全員の表情を見たカズヒラは困った様に微笑む。

「…………残念な事に俺はこの戦いの全てに関わっていた一人なんだ…」

名を変え、過去を偽り生きていたのは何もパスやヴェノムだけではないのだとカズヒラは苦笑した。

「………マスター、聞かせて貰えますか…?」

そう問いかけるウイリアムは真剣でカズヒラはまた苦笑するとゆっくりと話始める。

「………じゃぁ、始めようか。ザ・ボスの死から始まったこの戦いの一部始終を…」

まるで子供の夢枕で物語を紡ぐ様に静かな声で…────────。

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