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□△Triangle▽
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「ねえそこの彼女!」

休日、いつものように毬江と図書館に来て、帰り際に私が本を借りているとそんな声が聞こえてきた。
"ナンパ...?"
そう思ってこの場にはふさわしくないその声がした方へ目をやると、どうやらその声の主は私の親友へ声をかけていたらしい。

手続きが済んだので、少し急いで毬江の元へ向かうと、私が着くよりも早く小牧さんが対応してくれた。
"ああ、やっぱり小牧さんは毬江のヒーローなんだな"
なんて思った自分は多分おかしい。
これしきのことで小牧さんをヒーロー扱いとは、相当嫉妬深くなってしまったようだ。

嫉妬なんてしても、あなたのその毬江に向けられる優しい目は、私には向かないのに。

「あ、東雲さん。来てたんだね。」

私に気付いた小牧さんがそう言う。
無論毬江とはちがって幼馴染ではない私のことはご丁寧に苗字呼びで、それがさらに壁を感じさせる。

「はい、今日は毬江と選び合いっこしてたんです。私からはレインツリーの国を勧めたんですけど、毬江ったら可愛いんですよ、あらすじを見るや目を潤ませてこっちを見つめむぐっ!?」

毬江が顔を少し赤くして私の口を手で塞ぎ、『言わなくていいの!!』と携帯に入力して見せてきた。

こういう照れ屋なところもかわいくて大好きだ。

「えーせっかくかわいかったのに〜、笑」
「その話、今度毬江ちゃんがいないときにでも聞かせてよ?笑」

と半ば冗談で言ってくる小牧さんの真意が知りたい。切実に。

「それからレインツリーの国は俺からも勧めようと思ってたから、ちょっとびっくりしちゃったよ。あ、それじゃそろそろ業務に戻らなきゃ。またね。」

そう言って私の頭をぽんぽんと撫で、毬江に手を振って去っていったのだから、言うまでもなく私の顔は赤いだろう。

髪で顔を隠すようにしていたが、きっと毬江にはばれていただろう。
いたたまれなくなって、毬江を急かすように図書館をあとにした。


小牧さん、どうしてそんなことするんですか。あなたの想う人は他の誰でもない、私の横で綺麗に笑うこの子でしょ…?

そんな思いを胸に抱いて。
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