ツインテールと歪んだ日常
□第三話
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HR終了後の清掃、廊下にモップがけをする空が、窓辺で外を観ている正臣に話しかける(こいつは清掃サボっているのだろうか)
「そういえば正臣はなに委員になったの?」
「おう、風紀委員」
目の前の幼馴染みが風紀委員としての活動をしている姿が想像できなかった
「うそぉ。」
「嘘じゃない。まあ本当はクラス委員になりたかったんだけどよ、立候補者十五人による壮絶なジャンケンの結果残念ながら俺は落ちてしまったよ」
「十五人のジャンケン!?決めるの凄い時間かかるんじゃない!?」
空のオドロキポイントは若干ずれていた。
そんな下らない話をしながら空は規定された区画のそうじを終えて鞄を持って正臣と歩き出す。
昇降口に行くと園原杏里と矢霧誠二が話しているのを見かけた。
少し言い合っていたような雰囲気だったが、空達が会話を聞ける範囲外にいる間に会話が終わったのか誠二は教室に向かって歩いていた。
「おうおう、入学三日目にして痴話喧嘩とはカッコいい事してくれるじゃん」
正臣が誠二の前に立ちはだかるっていうかいつの間に……
そしてどう考えても正臣が悪役だった。
「……なんだお前?今のはそんなんじゃねぇよ」
「ごめん、ええと、矢霧君だよね?私、同じクラスの竜ヶ峰空、よろしく 」
「ああ……知ってるよ、初日も今日も大変だったな」
「あはは……」
笑えなかった。
そんなクラス内での話をされてかやのそとになった正臣が少しムッとした表情で二人の間に割り込む
「ちょっと、正臣」
「お前いいガタイしてんなぁ。よし、ナンパに行こう」
「「はぁ?」」
あんまりにあんまりな正臣の台詞に空も誠二も同時に声をあげる
「正臣、やめなって俺がいれば十分だろ」
「あのな、ナンパってのは背の高いやつが一人いた方が有利なんだよ。お前のそのチート性能使ったらナンパのスリル感あじわえないだろー」
なら何故自分をナンパに誘うのだろうか。
そうすると誠二が呆れたような目で二人に声をかける
「悪いけど俺、彼女がいるんだ」
一見どころかかなり致命的な一言だが、それで引き下がる正臣ではなかった
「関係無ぇって」
「いや、大有りでしょ」
空が常識とてらして是とされることを言うも正臣には伝わらない。
「この際アンタの彼女の有無はいい、ナンパで引っ掛けた時点ではまだ『彼女』とは言わないから浮気にはならねぇっての!」
空にとって正臣の理論は理解の範疇を越えていた。何を言ってるのか全く分からん
しかし誠二は目の色一つ変えること無く正臣に向かい首を振る
「駄目だ、他の女を気にかけることは、裏切りだ」
「律儀だなぁ。彼女は裏切れないってやつ?」
「裏切るのは彼女じゃない」
「は?じゃあ誰だよ」
誠二は一呼吸おいて言い切った
「愛だよ」
その答えは空の未だに来なくて越えられない思春期の命題だった。
空は恋とそれに付随する人を愛する気持ちがまだいまいち理解できていない。ツインテールツインテール言い過ぎた弊害だが
だけど、彼の誰かへの愛を裏切れないという言葉はわかる気がする。
自分もツインテールを愛してるから裏切らない自信があるから。
「(だけど俺は対象のツインテールも俺のツインテールが好きな気持ちも裏切らないけど)」
彼は彼女は裏切れると言った。
人を愛する気持ちってそういうものなのだろうか
誠二の愛の講義が終わったのか誠二は教室に向かって歩いていた。
「さすが、お前の男女無差別フェロモンが効かなかっただけあるな」
「うん……そういう言い方やめてってば」