ツインテールと歪んだ日常

□第三話
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二人は喧嘩しながらどっか行ってしまったので空は慣れた手つきで鞄から使い捨て手袋を取り出すと散乱したゴミをパパッと集めてゴミと一緒に手袋をゴミ箱に押し込む。
流石に空はゴミ箱を持てないのでそのままその場に残して杏里に声をかけてその場を後にする

「(う〜ん、癖で入れといた手袋を本来の意図で使うことになるとは……)」

愛香がゴミ箱をぶっ飛ばしたのは一度や二度のことではなく(そのたびに次はやらないとか言っていた)その後片付けの為に総二の時は内緒で使い捨て手袋を鞄に入れていた。(もちろんそんなものを入れているのは最初に使ったときにバレたけど)

うつむいて歩いている杏里を誘って空は近くの喫茶店に入る

「……大丈夫?」

飲み物は二人ともクリームソーダ
杏里がなんでもいいと言ったのと疲れた空が炭酸と甘いものを欲した結果だった

「あの……ありがとうございました、さっきは助けてもらって」
「いや、結局助けたのはあの男の人だし私なんもしてないよ」
「でも……」

……会話が続かない

「さっきの人たち、おんなじ中学の人?」

杏里が小さくうなずいたのを見て話を続ける

「なら、さっきの会話的に中学の頃は美香さんって人に助けられてたけど、いなくなったとたんあの人たちが戻ってきたってこと?」
「はい……」
「その美香って私の後ろの席の張間さんだよね」

杏里が落ち着きを取り戻したのか静かに言葉を紡ぎはじめる

「それが、張間さん学校は欠席って事になってますけど、入学式の前の日から一度も家に帰ってないんです」
「……え?」

それは警察に捜索願いとか出すべきなのではなかろうか。
すると杏里は空が思ったことに気づいたのか首を横に振って話を続ける。

「正確には行方不明じゃないんです。メールが私と張間さんの実家に入ってるんです。『傷心旅行にいってきます。気にしないでください』とか今どこの駅にいるとか」
「傷心旅行に、かぁ。何かあったのかな?」
「それは……」

傷心旅行の心当たりが杏里にはあるようだが、口ごもる。
なんだか言いにくい理由があるのだろうか

「あ、別に言いにくいなら言わなくても大丈夫だよ。」

と、空は伝えたが杏里は空を信頼に足る人物と認識したのか口を開く

「あの、驚かないで聞いてくれますか?」
「内容による……かな。ある程度には驚かないけど」

ばか正直に言う空に杏里は少し安心するように微笑むと単刀直入に事実を告げる

「張間さんはストーカーなんです。」

空はクリームソーダを飲みながら、黒い眼鏡の少女の事を思い出した。
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