ツインテールと歪んだ日常

□第三話
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物語のスタートから数日。
特に目立ったトラブルもなく(家の近くの自販機が一台無くなっていたが故障だろうか)数日が過ぎていた。

「(平和だ。)」

前回の高校生活はとりあえず毎日律儀に現れるエレメリアンと戦い続けで放課後は休まることを知らなかったが物語がスタートしたとは思えないほど平和でなんとも幸せなことだろう。

今この来良学園ではHRをやっている。
クラス内での役割分担。所謂クラス委員決めである

「そうだ、ナンパに行こう」

空の真後ろの席から聞きなれた声がどこかのコマーシャルのようなフレーズを呟いた。
空のいる大半が制服なA組の教室内で既に私服なB組の彼は目立つ事この上無い。

「なにしに来たの。」

この目立つ学生は勿論正臣だが、不良学生に見られているので(外見が茶髪ピアスおまけに私服なあたりが)誰もこの場違い野郎を追い出したりはしない

このクラスに今担任はおらず(何故自分のクラスを持つ担任はこう面倒くさがりなのか)出席番号一番の男子が哀れ議事進行を勤めていた

「クラス委員がまだ決まってないのですが、誰かいませんか」
「ハ……」

その言葉に真っ先に反応したのはこのクラスの者ではない正臣だったが、空が素早く挙げようとしていた手を押さえる
正臣がなんで押さえるんだーとか言いながら空のツインテールの一房を撫でる。
幼馴染みとして一番長くいたからか正臣のツインテールのさわり方はかなりうまい。
今のところ出会った中では一番だ(但し、空の方がツインテールのさわり方は上級者なのだがそれを批評できる他人がいない)

そんな中なかなか決まらないクラス委員に終止符が打たれる。
色白の眼鏡少女。初日、一番印象に残った園原杏里が手を控えめに挙げた。

「あ、ええと、園原……杏里さん?それじゃ彼女に決定ということでお願いします!」

クラスからの、まばらな拍手の中司会交代をしたのか男子が杏里にたち位置を譲って席に戻った。

「あの、それではもう一人クラス委員をやりたい人はいませんか」

透き通る杏里の声が教室に響く。
空がどうしようかな。やってもいいかな。とか考えながら杏里を見ると杏里の視線が一点を見つめているのに気づいた。
視線を追ってみるとその先にはこのクラス二番目の長身、保険委員矢霧誠二だった。
空もなんとなく覚えている一昨日の自己紹介の時の空への阿鼻叫喚のラブコールに参加しなかった一人だ(あと杏里ちゃんが参加しなかった)

そして杏里の視線がゆっくり空の後ろに向けられるそこにあるのは

「俺も罪な男だ」

正臣だった。

「彼女、俺に惚れたな。これから始まる危険にデンジャラスなリスキーナイトに不安を感じてる様子だぞ?」
「やめてよ、そう見境なく女の子に声かけるの。」
「なんだ、空嫉妬か?心配しなくても俺の一番は空だからな」

そういうことではないのだが。
って言うか正臣は会う女性会う女性そんな事言って回っているようなので信憑性が薄い。

空はゆっくり手を挙げた。
何故か手を挙げたくなった、と言ったらおかしいのだが挙げたくなったから挙げたとしか言いようがない。
誰も手を挙げないしいっかなと思っただけだけと

「あ、……では竜ヶ峰さん、お願いします」

初日とは、違う意味でクラスは阿鼻叫喚に包まれた
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