剣と騎士の童話
□第五話
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あの転移門広場の騒ぎからようやく解放された僕たちはゆっくり迷宮区へ続く森の小路を歩いていた。
「それにしてもキリトくん、いっつも同じ格好だねぇ」
キリトさんがうっと言葉に詰まる気配を感じる。
ルナさんもぼくもゆっくりキリトさんに視線を移していく
レア装備なんだろうが古ぼけた黒のレザーコートに同色のシャツとパンツ
一応、黒なところはルナさんもなんだがルナさんは服を気分でかえる人なので毎日同じ格好ということはない。
三年前、現実世界で迎えたハロウィーンの日に女物のドレスを着て僕の帰宅を待っていたこともある。
なんとその為だけに何ヵ月も前から髪を伸ばして準備していたと言われたときは流石にドン引きした。(ドレスは手作りだった)
「い、いいんだよ。グリムみたいに服に金をかける訳じゃないし。」
「失礼ですね、僕の服はちゃんと自分で材料を集めて造っているのでかかっているのは僕の労力だけですよ」
言った瞬間、はぁ?といいたげな反応がキリトさんとアスナさんから降ってきた。(ルナさんは知ってた)
「ってことはグリム、裁縫スキルはいかほど?」
「裁縫スキルは一年は前に《完全習得》しました」
ありえない、って顔をしている。
ルナさんが話の軌道を修正しようと声をかけてくれた
「ところで、キリトはなんで黒ずくめなの?俺と一緒でキャラ作り?」
「えっ、ルナってその格好キャラだったのか。それにそんなこと言ったらアスナだって毎度おめでたい紅白……」
といいながらおそらく癖なのだろう、キリトさんは索敵の動作をしてなにかを見つけたのか言葉を詰める
「仕方ないじゃない、これはギルドの制服……、ん?キリトくん?」
キリトさんの反応が弱くなったと感じたのかアスナさんは、キリトさんに向き直る。
僕は右手を振ってマップを可視モードで呼び出す。
四人で一つのウィンドウを覗きこむ。
「後方に十二人のプレイヤー」
「多いですね。」
「綺麗に並んでるみたいですね」
「確認する?」
こうして満場一致でプレイヤーの正体を見ることに決定した僕達は道外れの土手の上にある茂みに隠れることにしたのだが
「あ……どうしよ、わたし着替え持ってないよ」
確かに茂みの中で紅白の衣装は目立つかもしれない
「アスナ、つかう?」
と、ルナさんがオブジェクト化したのはフードのついた黒いマント。
あれは僕が作ったやつで隠蔽のボーナスがかなり高い作ったはいいがそれより性能のいいマントを既に持っていたのでルナさんに譲った物だ。
因みに僕は黒いベルベット調のフードマントを被っている。フードには猫耳がついていて裾にはフリルがついてるゴスロリアイテムだ。
四人でうずくまっているととうとう十二人の集団が僕達の下を通過しはじめた