Kirby

□一つキミに望むなら
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一つキミに望むなら








「例えば、サ」
キミが言った。当然のごとくローアに居座っているのが腹立たしかった。また、それに屈服している僕も。
「時を刻まぬ時計に、何の価値をキミは見出だすのサ?」
ゆっくりと思考する時間は、時の流れが緩やかなようでいい。この沈黙は、気のおけないといっていい数少ない友人のマルクだからこそ言える、心地よいのだ。
考えの末、ボクはこう答えた。
「見た目の美しさ、カナ。鑑賞シテ、愛でればイイ」
「そう、なのサ」
自分で聞いといて、素っ気ない返事だ。しかし、これも癖だと知っている。
「じゃあ、もしボクが」
声音が震えるようだった。返事を期待なんてしてない突っぱねたような雰囲気があった。それなら、聞かなければイイのに、とまで思うのだ。
「魔法の力を、使えなくなっちゃったら、マホロアは……………………」
ボクを毎日のように眺めて、愛して呉れるのサ?、なんて。
お人形の目で、どうしたら自分が清純に見えるか、計算し尽くされている首の角度で。欲しい答えを頂戴、とばかりにボクに訴える。
「馬鹿馬鹿しいネ」
裏切るのが当然かのように。ボクはボクを演じる。
「ボクならそんなキミは使い物にナラナイカラ、捨ててシマウと思うヨ」
優しい嘘で騙して欲しいなら、あの魔女のところへいけばいい。いつだってキミが望む以上の、甘くて非現実な素敵な上っ面の言葉くらい、いくらだって用意できるはずだ。
「それでこそ、マホロアだったの忘れてたのサ」
なんて可哀想なマルク!
寂しそうなピエロ、若しくは哀れな道化師を演じるマルクに。
どんなに心を許すふりをしても、仮面は剥がれないボクに。
「マァ、救済くらいはあると思うヨ」
ひとりごちた言葉だった。

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