ネオロマンス短編小説

□特技の巻
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 詩紋はあかねの着ている水干の裾が(ほつ)れているのに気がづいた。
「あかねちゃん。水干の裾が解れているよ」
「あ! 本当だ……」
 あかねは困った顔になる。
 実はあかねは裁縫が苦手だった。
 それを察した詩紋が笑顔を向ける。
「貸して。僕が直してあげる」
「本当! ありがとう」
 あかねは水干を脱いで詩紋に渡した。
 すると詩紋は水干の下に着ていたジャンパースカートも所々が解れ、ブラウスの袖の釦が外れかけているのにも気づいて言った。
「あかねちゃん。ジャンパースカートとブラウスも貸して」
 しかしあかねは脱ごうとはしなかった。
「あかねちゃん?」
 不思議に思い首を傾げる詩紋。
「詩紋君は……私に下着姿になれと?」
 ようやく、気づいた詩紋は顔を赤面にする。
「ご、ごめんっ……」
 慌てて謝ると、自分のブラウスの上に着ていた狩衣を渡した。
 受け取ったあかね下着の上から詩紋の狩衣を着た。
 詩紋は、まず水干の解れた所を縫いはじめる。
 あかねは詩紋の近くで床に俯せ両手で頬杖を突いた上に顎を乗せ、両足を交互に上下に動かしながら詩紋の手先を見つめた。
 そんな、あかねの格好に詩紋は目のやり場に困っていた。
(あかねちゃんって、僕より華奢な身体(からだ)しているなぁ。やっぱり女の子なんだよね)
 今あらためて、そう意識した詩紋だった。
 なんだか妙に落ち着かない気分を鎮めようと、手元に集中する。
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