賢者の石

□私の知らない世界
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「僕は、パーシー・ウィーズリー。」
「それから、俺はフレッド、こっちはジョージ、俺ら見ての通り、双子なんだ。」

「「よろしく、麗しきお嬢さん!!」」


双子たちは声を揃えた。



「君は?」
パーシーはニッコリして聞いてきた。


『わ、私は、ユミ・カンザキ。』


「ユミ、よろしく。」


パーシーは私の前に手を出して握手を求めてきた。

『よろしくお願いします。』

おそるおそるパーシーの手を触る。




『........温かい........』
人に触れることは初めてじゃない。



感覚だけ覚えている。





「「おお、麗しき姫だ、その笑顔は!!」」


笑顔?

笑った?

「君の手は冷たくて気持ちいいよ。」


パーシーは柔らかく微笑み手を離した。









人の温もり。







知らない世界で、初めて話しかけてくれた。



ありがとう。





「君は、一人で駅に来たのか?」


『................。』



「あ、ごめん、気になっただけだよ。」



パーシーは、すぐに違う話題に移った。




聞かれて嫌だった訳じゃないけど、

答え方が、わからなかった。









「僕たちの弟でね、」

「君と一緒の1年生のヤツがいるんだ!」


フレッドとジョージが顔を見合せて言った。




『へぇ........』


悪気があったわけではない。
これしか答えようがなかった。




それに、これからが不安で。



双子たちは気にする様子もなく。

「「ま、そいつに会ったら、仲良くしてやってくれ!!」」


二人は「「じゃあまたね!」」
と言うと、どこかへ消えてしまった。





「うるさくてごめんね、疲れただろう。」


パーシーは気遣ってくれる。



『いいえ。面白い弟さんたちで........』


窓の外を見る。



私の知らない世界が目の前に広がっている。



よく意識すれば、私が話しているのは英語。

私の顔は東洋人だったはず。



もう、なんでもいいか。


この世界に来て、きっと私は後悔しない。



何度でもやり直せる。



そんな気がした。











双子たちが出ていき、パーシーと二人になったが、話すこともなくなり、話も途切れてしまい........






『どこへ向かっているんですか?』


「ホグワーツだろ?」


彼は笑う。

『ええ。』

その答えに安心して、私も笑う。





「日本出身?」


『日本?』


わからない。

アジアということぐらいしか。



「ん?」

パーシーは、おうむ返しに言う私を全く気にしていない。



よかった........。


『...............。』


不安だと言ってしまおうか。



なにも知らない、と。




「何か心配なことがあったらいつでも言って。」




優しいひと。






私は、ただ頷くだけだった。






「........ホグワーツに行けば、皆家族さ。」



私は、下に置いていた視線を彼に向ける。


『か、ぞく........』

「うん、だから、心配しなくても大丈夫だよ。」



心配しなくても大丈夫だよ。





大丈夫だよ。





『ありがとうございます。』



再びお礼を言うと、もうそろそろホグワーツに到着だということが周りの人々の動きでわかる。





「もうそろそろ到着だから、僕は着替えてくるね。」


パーシーは制服を持つとコンパートメントの外に出ていった。
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