賢者の石

□私の知らない世界
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パーシーが外に出ていくと、私は自分が制服を着ているということを改めて確認した。





私のことを、誰も知らない世界。







過去を振り返ってはいけない気がする。

と言っても、


私には振り返ることのできる過去がない。



『........このまま、何もわからないままだったらどうしよう。』





呟きは、ただ虚しく消えていく。









パーシーはコンパートメントに戻ってきた。




私は、彼と目を合わせることができない。


「ユミは、どこの寮になるんだろうね。」




『寮?』


その言葉に、私は彼の顔を見ずにはいられなかった。





「ホグワーツには、グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクローにスリザリンがあるんだ。知ってる?」


首を横に振ると、パーシーは私の頭を撫でた。



「そりゃ、知らないよね。僕はグリフィンドールなんだ。」



『........そうなんですか。』


グリフィンドール。



頭の良さそうな名前。




『わたしは、どこかな。』



初めて自分から聞くと、パーシーは嬉しそうに「グリフィンドールかな?」と言った。











「さあ、到着したみたいだよ、外に出ようか。」



汽車は止まり、列車が騒がしくなっていた。






外へ出ると、真っ暗だった。




「じゃあ、ユミはここね。僕は1年生とは別に移動だからここでさよならだ。またね!」



皆のところまで連れてきてくれたんだ。

『ありがとう、パーシー!!』



私は、パーシーの名前を初めて呼んだ。


パーシーは私に手を振っている。




ドンっ、


誰かにぶつかった。

「ごめんよ、大丈夫?」



『こちらこそ。』


横をみると、顔の整った少年がいた。




「........1年生だよね?綺麗だね。」

制服が?



『................』

「僕は、セドリック・ディゴリー。君は?」



『ユミ・カンザキ。』




「 ユミ。ホグワーツでよろしくね。」



フレンドリーだなぁ。




セドリックは友人に呼ばれると、返事をして私に別れを告げた。




しばらく背中を見つめていると遠くから声が聞こえた。



「イッチ年生はこっちだ!!」




大きな男が見えた。



『................すごい........』




「ねぇ、貴女も一年生よね?」

隣から声をかけてくる女の子。


栗色のふわふわした髪の可愛らしい女の子。




『ええ。』



「私は、ハーマイオニー。ハーマイオニー・グレンジャーよ。よろしく。」


『私は、ユミ・カンザキ。よろしく。』


よくもまぁ、記憶の中に自分の名前を見つけることができたと思う。
この名前が本当に正しいのかさえ分からないというのに。



「そう、ユミはどこの寮に入りたくて?」


少し気取ったしゃべり方をする女の子だ。

『あぁ、うぅん、まだ決まってないけど、グリフィンドールかしら。』

パーシーがいる寮にしておいた。頼れる人がいないから.......
というより、グリフィンドールしか名前を思い出せなかったのだ。


一瞬自分の記憶力を疑った。








「あら、私もよ。貴女とは仲良くできそうだわ。」


ハーマイオニーははにかんだ。




『ええ。そうね。』


本当に?








「四人ずつボートに乗るんだ!!」


先ほどの大男の声が聞こえた。




「ユミ、一緒に乗りましょう。」

ハーマイオニーの言葉にうなずくと、二人の男の子がいるボートに乗り込んだ。



「やあ、えーと、ハーマイオニー。」

と、赤毛の男の子。

なんとなくパーシーや、フレッド、ジョージに似ている。この子が彼らの言う弟だろうか。


いや、偶然過ぎて何とも言えない。




「この子はユミ。で、こっちはロンで、こっちはハリーよ。」


ハーマイオニーは、ロンの声掛けには答えず、私を彼らに紹介した。




『よろしく。』


あまりにも素っ気ないので、ハーマイオニーは少しびっくりしていた。




私、シャイなんだな。

早いところ直さなきゃ。








「ユミは、マグル?」

『マグル??』

ハリーの問いかけに眉をひそめていると、ハーマイオニーが説明をしだした。








マグルとは、純血というものの反対で、両親が魔法使いではないもののことを指すらしい。





『知らない。』



「え?知らないってどういう.......」


ハーマイオニーの言葉が終わるか終らないかのうちに、船は崖下に到着した。
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