賢者の石
□組分け帽子
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城の中に入ると、どこか懐かしい感覚。
エメラルド色のローブを着た魔女がいる。
あれ?この人もどこかで......
いや、気のせいか。
「ホグワーツ入学おめでとう。」
この魔女の話が始まったが、私には余裕というものが全くなかった。
すべてを思い出そうと必死だったのである。
「準備ができるまで静かに待っていてください。」
魔女は言い終えると、中に入っていってしまった。
『そういえば、どうやって組分けされるの?』
「怖がらなくていいさ、君は純血だろう?」
ふいに肩を叩かれ、体をびくっと揺らすと今度は隣から同じ声が聞こえた。
同じ声ということで、双子かと思ったが、こんなところにいるはずもなく。
「僕は、ドラコ・マルフォ......ん?君は..........」
金髪オールバックの綺麗な男の子。
あれ?この顔もどこかで.......
「ユミ.......?なわけないか。」
『どうして私の名前を?』
私のことを知ってるの?
「あぁ、知り合いに似てただけさ。気にしないで。で、君は純血?」
『知らないの.......』
「君は綺麗だからきっとスリザリンだよ。」
『.....私はきっとお金持ちじゃないわ。』
また言われたが、皆の制服と変わらないよ。
私の中には、純血=スリザリン=金持ち....
というイメージが勝手に広がっていた。
「何が?顔だよ、きれいなのは。」
はい???
『貴方のがよっぽど綺麗でしょ。』
ドラコは私の言葉に真っ赤になった。
と、そこでさっきの魔女が戻ってきた。
先生だったのだ。
「さあ、一列になって。わたしについてくるのです。」
皆一斉に先生の後ろについていった。
一列じゃなくなってる.....
私はハーマイオニーと離れてしまい、ドラコの後ろについた。
「そんなはずはないのに......ユミは、もう.......」
ドラコは何か呟いていたが、大広間に入ると、目を輝かせていた。
『この光景。見たことある気がする......。気のせいかな。』
「なんていった?見たことあるって?」
ドラコは私の小さな声をしっかりとキャッチした。
『うぅん。素敵ね。』
「あぁ!!」
ドラコははしゃいでいた。
この子は、スリザリン?に入りたいんだ。
スリザリンも楽しそうだなぁ。
前を見ると、汚れている帽子が椅子の上に置かれていた。
何をするんだろう??
私は後ろのほうにいたため、背伸びをした。
「「ひめーっ」」
小声で誰かが叫んでいる。
上級生の人たちかな?
「「ユミ姫!!」」
聞き覚えのある声だったので振り向くと、グリフィンドールの席のほうで、手を振る二人組。
私は、にこりと微笑み、視線を前に戻した。
歌っている声が響いた。
いったい誰が??
帽子だ!
あの帽子が歌っている。
私はグリフィンドールとスリザリンに興味があったため、帽子の言葉を聞いてよく考えた。
グリフィンドールは、勇気あるものが住まう寮。
スリザリンは、どんな手段を使っても目的を遂げる。
勇気はないが、あると言ってほしい。
どんな手段を使っても目的を遂げる??そんな素敵なことやってみたい。
あぁ、両方いいなぁ。
他の寮のことは全く聞いていなかった。
「名前を呼ばれたら、前に出てきなさい。」
先生が言う。
「アボット・ハンナ!」
いちばん最初だなんて......
辛いな......
可哀想に........
「八ッフルパフ!」
帽子が叫んだ。
しばらくして、ハーマイオニーの名前が呼ばれた。
「グリフィンドール!」
ネビル・ロングボトム!
グリフィンドール!
ドラコ・マルフォイ!
スリザリン!
ハリー・ポッター!
ハリーは寮を決められるのに長くかかった。
自分がまだだから、長く感じられたのかもしれない。
グリフィンドール!!
そして、ロンもグリフィンドール。
周りの人はどんどん決まっていった。
あれ?私の順番が回ってこなかったような.......?
誰もいなくなり、一人となったところで、魔女ではなく、帽子が名前を呼んだ。
周りの声が無くなる。
「ユミ・カンザキ.....」
魔女は、帽子に続いて名前を呼ぶ。
先生たちの目が、私に向いた。