賢者の石
□魔法という授業
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次の日の朝、私はハーマイオニーよりも早く目が覚め、制服を着ていた。
昨日、お風呂で初めて鏡を見た。
汽車の窓で何となくは見ていたけれども、私の顔はどこか幼い気がした。
東洋系は幼いのかな。
もちろん、自分の顔は知っていたし、英語を喋っているのも、話しているうちにわかったけれども。
朝が来ても思い出せないことは思い出せない。
思い出そうとすると、頭の中がこんがらがってしまって上手くいかないのだ。
「うぅん........あら?ユミ?おはよう。」
隣のベッドから可愛らしい声が聞こえた。
『おはよう、ハーマイオニー。』
目を擦りながら起き上がるハーマイオニーは、小動物のようで可愛かった。
「よく眠れた?」
『ええ。ぐっすりよ。ハーマイオニーは?』
「今日の授業が楽しみでドキドキして眠れないと思ってたけど、ぐっすり眠れたわ。」
ハーマイオニーは授業が楽しみで仕方がないようだ。
私は、といえば。
特に受けたい授業もないし。
ハーマイオニーが制服に着替えると、大広間へ向かった。
早すぎたため、まだ人が少ししか来ておらず、お皿の音のみが聞こえていた。
テーブルに置かれたサンドウィッチを二つとって、食べようとしていると........
後ろを通る人がいた。
グリフィンドールの子かな?と思い振り向くと、昨日目が合った全身黒色をまとった先生、スネイプ先生がいた。
『........おはようございます。』
「................あぁ。」
暫く私を見て、素っ気ない挨拶(と言えるだろうか?)をしてコツコツと歩いていってしまった。
「あの人がスネイプ先生ね。」
前に座っていたハーマイオニーがコソッと私に言う。
『多分ね........かわった雰囲気の人。』
もうない記憶のどこかに彼がいるのだろうか。胸の奥がチクリと傷んだ。
誰も来ないうちに食べ終わってしまい、また二人で教室へと向かった。
今からマクゴナガル先生の授業である。
授業まで一時間以上時間があった。
もっとゆっくり食事すればよかったかな。
ハーマイオニーと一言二言話すと、彼女は教科書を開き、予習に入ったため、私はボーッと外を眺めていた。
そういえば、私の杖。
いつの間に買ったんだろうか。
出して、握ってみる。
黒色の、真っ直ぐな杖だ。
でも、傷がついている。
いや、文字?
よくみてみると、何か文字が彫られていた。
ローマ字で書かれている。
あれ?私のイニシャルだ....。
普通、杖に自分の名前なんて書く?
それに、この杖、新しくない気がするんだけど。
急に廊下が騒がしくなり、自分の杖をしまった。
「一番乗りー.......じゃないな。見ろ、グリフィンドールのやつらがいるぞ......。ん?ユミ!!」
入口のほうを見ると、スリザリンの男の子三人組。
『ドラコ。』
ドラコは笑顔で近寄り、私の隣に腰をおろした。
「君がグリフィンドールだったのは残念だが、まあ、気にしないことにするよ。」
『??』
「そうだ!ユミに紹介しよう。クラッブとゴイルだ。」
『よろしく、私はユミよ。』
「「よろしく。」」
二人はお菓子の袋をいくつも開け、頬張っているため、私に目が向けられていなかった。
『ふふっ』
「ったく、こういうときくらい菓子はやめろ!!」
ドラコは二人に怒っていた。
ああ、平和だ(何が)。
周りを見渡すともう生徒が集まっていた。
でも、ハリーとロンは見当たらない。
寝坊?なんちゃって。
「ふん、どうやらポッターがいないようだな。」
ドラコはなぜか嬉しそう。
そして今気づいたのだが、ハーマイオニーとは少し離れて座っていたので(考え事をしているうちに窓のほうに寄っていってしまった。)周りはスリザリンの生徒ばかりだった。
やだ、いじめられる!!
妙な冷や汗をかいていると、ドラコが
「ユミもスリザリンの仲間入りだな」
といった。
仲間入りって.......
でも、スリザリンの人々はグリフィンドールが混じっていることに気づきもせず。
マクゴナガル先生が教室に入ってきて出席をとった。
「ハーマイオニー・グレンジャー」
「ハイ」
「ハリー・ポッター」
しーん。
マクゴナガル先生は、初日からハリーがいないので首を傾げた。
「ユミ・カンザキ」
『は、はい』
「まあ、なぜ、スリザリンのほうに?」
先生の言葉と同時に皆の視線が私に集まる。
「僕が呼んだんです。彼女は、スリザリンにふさわしい。」
ドラコは教室中に聞こえるように言った。
「相応しいも何も決まりですから。ですが、ええ。席は自由ですよ。」
先生は私の目を見なかった。
なんとなく見捨てられている気がしてしょんぼりとしていると、ドラコが自分の家について話してくれ、気持ちが明るくなった。
「では、マッチを針に変えてみますよ。」
そうしてマッチを針に変える練習が始まった。