賢者の石

□魔法という授業
1ページ/9ページ

次の日の朝、私はハーマイオニーよりも早く目が覚め、制服を着ていた。





昨日、お風呂で初めて鏡を見た。

汽車の窓で何となくは見ていたけれども、私の顔はどこか幼い気がした。
東洋系は幼いのかな。



もちろん、自分の顔は知っていたし、英語を喋っているのも、話しているうちにわかったけれども。



朝が来ても思い出せないことは思い出せない。
思い出そうとすると、頭の中がこんがらがってしまって上手くいかないのだ。




「うぅん........あら?ユミ?おはよう。」


隣のベッドから可愛らしい声が聞こえた。


『おはよう、ハーマイオニー。』


目を擦りながら起き上がるハーマイオニーは、小動物のようで可愛かった。




「よく眠れた?」

『ええ。ぐっすりよ。ハーマイオニーは?』

「今日の授業が楽しみでドキドキして眠れないと思ってたけど、ぐっすり眠れたわ。」


ハーマイオニーは授業が楽しみで仕方がないようだ。


私は、といえば。
特に受けたい授業もないし。






ハーマイオニーが制服に着替えると、大広間へ向かった。


早すぎたため、まだ人が少ししか来ておらず、お皿の音のみが聞こえていた。


テーブルに置かれたサンドウィッチを二つとって、食べようとしていると........



後ろを通る人がいた。
グリフィンドールの子かな?と思い振り向くと、昨日目が合った全身黒色をまとった先生、スネイプ先生がいた。



『........おはようございます。』

「................あぁ。」


暫く私を見て、素っ気ない挨拶(と言えるだろうか?)をしてコツコツと歩いていってしまった。



「あの人がスネイプ先生ね。」

前に座っていたハーマイオニーがコソッと私に言う。



『多分ね........かわった雰囲気の人。』

もうない記憶のどこかに彼がいるのだろうか。胸の奥がチクリと傷んだ。








誰も来ないうちに食べ終わってしまい、また二人で教室へと向かった。






今からマクゴナガル先生の授業である。


授業まで一時間以上時間があった。



もっとゆっくり食事すればよかったかな。


ハーマイオニーと一言二言話すと、彼女は教科書を開き、予習に入ったため、私はボーッと外を眺めていた。




そういえば、私の杖。




いつの間に買ったんだろうか。




出して、握ってみる。


黒色の、真っ直ぐな杖だ。




でも、傷がついている。


いや、文字?






よくみてみると、何か文字が彫られていた。





ローマ字で書かれている。





あれ?私のイニシャルだ....。

普通、杖に自分の名前なんて書く?




それに、この杖、新しくない気がするんだけど。





急に廊下が騒がしくなり、自分の杖をしまった。



「一番乗りー.......じゃないな。見ろ、グリフィンドールのやつらがいるぞ......。ん?ユミ!!」


入口のほうを見ると、スリザリンの男の子三人組。



『ドラコ。』


ドラコは笑顔で近寄り、私の隣に腰をおろした。



「君がグリフィンドールだったのは残念だが、まあ、気にしないことにするよ。」


『??』


「そうだ!ユミに紹介しよう。クラッブとゴイルだ。」

『よろしく、私はユミよ。』



「「よろしく。」」

二人はお菓子の袋をいくつも開け、頬張っているため、私に目が向けられていなかった。



『ふふっ』

「ったく、こういうときくらい菓子はやめろ!!」


ドラコは二人に怒っていた。



ああ、平和だ(何が)。






周りを見渡すともう生徒が集まっていた。




でも、ハリーとロンは見当たらない。




寝坊?なんちゃって。


「ふん、どうやらポッターがいないようだな。」

ドラコはなぜか嬉しそう。



そして今気づいたのだが、ハーマイオニーとは少し離れて座っていたので(考え事をしているうちに窓のほうに寄っていってしまった。)周りはスリザリンの生徒ばかりだった。





やだ、いじめられる!!



妙な冷や汗をかいていると、ドラコが
「ユミもスリザリンの仲間入りだな」
といった。



仲間入りって.......



でも、スリザリンの人々はグリフィンドールが混じっていることに気づきもせず。







マクゴナガル先生が教室に入ってきて出席をとった。





「ハーマイオニー・グレンジャー」

「ハイ」

「ハリー・ポッター」

しーん。

マクゴナガル先生は、初日からハリーがいないので首を傾げた。
「ユミ・カンザキ」


『は、はい』


「まあ、なぜ、スリザリンのほうに?」


先生の言葉と同時に皆の視線が私に集まる。



「僕が呼んだんです。彼女は、スリザリンにふさわしい。」

ドラコは教室中に聞こえるように言った。


「相応しいも何も決まりですから。ですが、ええ。席は自由ですよ。」


先生は私の目を見なかった。








なんとなく見捨てられている気がしてしょんぼりとしていると、ドラコが自分の家について話してくれ、気持ちが明るくなった。




「では、マッチを針に変えてみますよ。」


そうしてマッチを針に変える練習が始まった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ