賢者の石

□悲しみのケーキ
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次の日の朝、ハーマイオニーに長時間抱き付かれた後、朝食へ向かった。



今日も早かったため、先生たちも生徒も数人しかいなかった。



「ユミ、本当に大丈夫なの?」

『ええ。何ともないわ。』

「それなら、いいんだけれど......」

ハーマイオニーは、眉をひそめた。
疑われてるのかな。。。



『本当に―――.....』
「カンザキ.....来たまえ。」

『シュネイプせんせっ』
真後ろから聞こえた声に、変な声で反応してしまう。

「「.......(シュネイプ.....)」」


『はい、ただちに。』


私は何事もなかったかのように、唖然とするハーマイオニーに手を振り、先生の後を追った。







―――――

「どうかされたのですか??」

『いや.....クィレルが君をずっと見つめていたのでな.....』

「.....え?」

先生の部屋に入ると、薬品の匂いがした。

なんだか、
懐かしい香り......




『私は昔、先生の、こういう薬品いっぱいの部屋にいたんですか?』

「あぁ、そうだが?」

スネイプ先生は、なぜだ、とでも言いたげな顔で私をみた。

『懐かしい香りだなぁって、そう思ったんです。』


「.......そうか.....お前は....どこから来たんだろうな........」



不意に、スネイプ先生が私の髪を撫でた。

ピリッ....



胸の奥が痛む。
なんで痛むの?





『私、.......ずっと不安で.......その、急に知らないところに現れたから.......家族もいないし、友達も.......』

スネイプ先生は、ぎこちなく私を撫で続けた。




「思い出さなくてもいい。お前が生きていてくれれば.....それでいい。」


スネイプ先生の目に光が宿る。



先生はずっと一人だったんだ。


リリーも私もいなくなって.....


『私は、先生の役に立てたのでしょうか。』



私の言葉に、先生は目を見開いた。


「役に、立てた、だと?........わたしは、ユミを、そんな風に見たことはない......。」




ああ、その寂しげな瞳......
私は知ってる。





‟さよなら、セブルス......”
‟やめろ、行かないでくれ”







「ユミ......?」




『先生、私......思い出したいです。すべてのこと。』




「だが――――」
『スネイプ先生、私、呪文だけ覚えているんです。』
「何.....?」

そう、呪文はすべて使えそうだ。
簡単な呪文から、





死の呪文まで.......。

ただ、傷をいやす呪文は何故か知らないのだ。




『どうすれば、思い出せますか?』

「........。」

『先生!!』

「........ダンブルドアだ。」

『え?』

「ダンブルドアのところへ行け。」



私が返事をする間もなく、先生は私を部屋から追い出した。




『........せ、先生は?行かないんですか?』

ドアの外から声をかける。








返事はなかった。







私は、そっとドアから離れ、校長室まで走った。




すべてを求めて。
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