賢者の石

□クィディッチ
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11月になった。
霜も降りているし、そろそろ雪合戦の季節かな?
クィディッチはもうすぐそこ。
『ハリー、頑張ってね?』

ユミは談話室で窓の外を見ながら、ハリーに言った。


「うん、ありがとう」

ハリーの顔は緊張していた。

『大丈夫?緊張しないでいいのよ?』

ユミはニッコリしてハリーの隣に座り、手を握った。

ハリーはクィディッチよりもこっちの方がよっぽど緊張する、と思った。



「う、うん、その、ユミは箒で飛んだことある?」
ハリーはユミが飛行訓練の授業に出ていなかったのを思い出していた。

『もちろんよ、飛行は得意な方だわ』

彼女が≪得意な方≫というなら、得意中の得意ということだ。


「そうなんだ、凄いね!」
『そんなことない、ハリーのが凄いから』

彼女の謙虚なところにキュンとする。スリザリンらしいと皆は言うけれど、そんなことは全くない とハリーは思った。
美し過ぎて手が届きそうもないところは そうかもしれないけれど。



そんな彼女が自分の友達だなんて。




『ハリー?』

ユミの声にハリーは我にかえった。

「あ、ごめん、君のお陰で元気がでたよ」

『それならよかった』



ユミが行ってしまう。



名前を呼ぼうとしたとき、彼女はもう違う人に話しかけられていた。


残念に思ったが......それでも、少し話せたことが幸せだった。





ーーーーーー

土曜日。




グリフィンドール対スリザリン




ユミは何度も観たことがあるが、グリフィンドール側で観るのははじめてだったのでワクワクしていた。




「どういうことかわかるだろ?」

「ハロウィーンの日、トロールはあいつがいれたんだよ!」


ハリーが何か小声だが叫んでいる。


『どうしたの?』

「ユミ、貴女にも話しておかなきゃいけないわ!」
ハーマイオニーが私の腕を優しく包んだ。


『へ?』

「僕たち、この前、4階の禁じられた廊下へ行ったんだ。」

「そこに、三頭犬がいて、そいつは何か守ってるんだ‼」

「そこに隠されてるものをスネイプ先生が狙ってるって言うのよ.........」
ハーマイオニーは呆れている様子でハリーとロンの方をみた。


『セ.....スネイプ先生はそんなことしないわ。あの人、なんでも持ってるもの、ほしいものは.........まぁ、あっても1つだし、私が知っている限りそれはないわ。』


三人は、ほしいものはあっても1つ、というところに反応した。


「それだよ」
「ほしいものは1つって、それのことだ!」

ユミは自分の口が滑ったことを恨めしく思った。


ほしいもの=リリー
だった。

『違うわ。もう少し、頭を冷やしてーーー』

「君もハーマイオニーと一緒でおめでたいな」

ロンは不満そうに言った。


「スネイプならやりかねないだろ?ほら、ユミは一緒に来なかったんだし、言うべきじゃなかったんだ、ユミはスネイプのお気に入りだし、スリザリンでも人気だよ。スリザリンの味方をするのはあたりまえだろ」



ハリーはユミに嫌な思いをしてほしくなかった。
だが、ロンの言葉に しまった と思った。



『そ、そうだよね、ごめん。私は関係なかった。』
だって、一緒に行かなかったんだもの。
誘ってくれても行かなかったと思うわ、なんて、少しだけ強がりかな?



ハーマイオニーは「ユミになんてこというの!」とキレ気味だった。


グリフィンドールの皆は私のこと、そうやってみてたんだ。



ーーー

私は3人と目を合わせずに走り去った。



なーんにも楽しくない。
クィディッチが楽しみだなんて、バカみたい。

クィディッチは行くのをやめようかな。


ハーマイオニーが夜に抜け出したり遅くに帰ってきてるのは知ってた。


私は付き合いが悪いから、きっと誘ってくれなかったに違いない。


あの三人は私みたいなスリザリンぽい人間がまざるところじゃないの。




ドラコ.........
私も貴方と同じスリザリンならよかったのに。




私はどこにいっても孤独なんだぁ



そう思うと、自然と涙が出てきた。



『トム、っ、会いたいよ.........。ト、ム.........』


なんで生まれ変わっても一人なの?



もう、イヤだよーーー




「ユミ?」


壁にもたれて涙の伝う顔を覆っていると、癒しの声が聞こえた。


『ド......ラ、コ』


「どうしたんだ!!なんで、泣い.......おい、お前ら先に行ってろ。」
クラッブとゴイルは顔を見合わせ、私をチラリとみたあとで、寮へ戻ってしまった。


『ドラコ......』
「誰に泣かされたんだ?僕がボコボコにしてきてやる」

『わたし、やっぱり、スリザリンに入ればよかったのッ.......』


ポロポロと涙を流すユミをドラコは抱き締めた。


「あの帽子がどうかしてたんだ、.........それに、君の居場所は今日からここだ。君はいつもここへきていいんだ」


ここ?


周りを見渡すと、スリザリン寮の前。

嘘.........



何も考えずに走ってきた場所は、懐かしい場所ーーー



『ドラコ、ありがとう。』

今、言うべきだろうか。

『私.......貴方に言わなければならないことがあるの』


もう、戻れない。
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