賢者の石

□みぞの鏡
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あれから3週間が過ぎようとしていた。



私はセブルスに、トムのことで少し当たってしまったことを後悔していた。


セブルスはなぜか私を約1ヶ月避けているではないか。

なんで?
ちょっとくらい機嫌直してくれてもいいのに。
セブルスと仲良くなくなった(?)代わりと言ってはなんだが、双子やハリー、そしてハーマイオニーは今まで以上に仲良くしてくれるようになった。
ロンは論外(ロンなだけに)。





スリザリン生は相変わらず優しいし、私の家のような感じだ。
グリフィンドールは何となく家族というより友達という感じかな?



『ふぁ〜ぁ。セブルスも構ってくれないし、皆図書館で勉強だし、学校探検でもしようかなっ』



クィレル先生の視線はよく感じるけれど、授業中も私だけ当ててくれないし.........無視?

危なさそうだけど、セブルスに構ってもらえないからクィレル先生のところに行っちゃおうかなぁぁぁ



冬が近づいてるせいか、すごく校舎が静か。
みんなそれぞれの寮で、暖炉の前でぬくぬくしてるのかな。




ふと、トムと二人の部屋を思い出す。
目をつむると
暖炉があって、隣には私に紅茶を用意する優しい笑顔のトムがいた。


それから、私に手を伸ばして......

こう言うの。

≪寒くはないか?≫




『トム.........』


早く私を迎えに来て。

トム.........






気づくと、少し暗いところに来てしまった。




『ちょっと、ここは.......寒いかな』

青白い光だけが差し込む不思議な場所.......



何、これ。


鏡?



全身鏡なんてなかなか無いし。ついでに身だしなみチェックしちゃおーっと。



前に立つと、私以外に鏡に映る何人かの人。
私はびっくりしすぎて尻餅をついた。



『痛い.........ってゆーか、誰もいないよね?』



鏡に映る人は見覚えのある人ばかり。



もう一度立ち上がってその人たちをみると、私の後ろには、もういないリリーがセブルスと嬉しそうに抱き合っている。

私の隣には私にしがみつく幼いドラコと、そんな私を大事そうに抱き締めるトム.........。



抱き締められてる感覚なんてないのに。







自然と涙が頬をつたった。



だって、これはもう叶わないことだから。



リリーはセブルスとは結ばれない。



ドラコはもう成長して、



トムは現れない。




『なん、で.........』



「カンザキ」



『.........いつからいらっしゃったんですか、クィレル先生.........女の子が泣いてるときに現れるってことは、慰めてくれるんですか?』






涙を服で拭いながら鏡越しにクィレル先生を恨めしそうにみた。





「私なら、君を慰められるかもしれないな.........」


『ほんとですか?』



振り返った瞬間、彼が私の真後ろへ移動した。





「君が私の言うことをきいてくれるなら、な。」


『え.........?』

クィレル先生の手が私の髪に絡んでくる......


恐怖などなかった。




ドクン.........

私の中の何かが疼いた。



「っ?!」
クィレル先生は急に私の髪から手を離した。まるで、静電気が起こったかのように。







『どうしたんですか』


「.........いつから、だ、」


『え?』
クィレル先生の顔がひきつっている。


「そ、の、赤い目は.......」

『目?赤い?』
私は鏡で自分の顔を見た。
左の瞳だけ、赤く染まっている。




『.........ゃ、何これ。』




「気づかなかったのか。.....今から始めた方がいいのか.......あぁあ、私はどうすれば........お答えください.........」
クィレル先生が頭を抱えて何かもごもごと独り言を言っている。


『また、誰かと話して......』

「.........で、ですが.........私には出来かねます......」

クィレル先生の額に汗が滲むのがみえた。


『クィレル、先、生?』
恐る恐る彼の頬に手を当てる。

すると、彼の顔から恐怖の表情が消えていった。



「あぁ、それだ、君の力は.........素晴らしい。あの方に相応しい...」


クィレルはからユミから離れ、杖を向けた。






『え、ちょっと、杖を下ろしてください』

「手荒な真似はしたくないが.....」
『じゃあやめてください!なんでも言うこと聞きますから!』




あぁ、私はなんて弱いのだろう。





「ほう」
クィレルが杖をおろしたのをみて、ユミは彼を真っ直ぐみつめた。




『私は、何をすれば』



「幼いくせに自分のやるべきことをちゃんと理解しているのだな」

クィレルは楽しそうに笑った。
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