賢者の石
□悪い夢
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スネイプはフルーツティーを飲むユミを長い間眺めていた。
『セブルス.........これ、美味しい』
まだ瞳が潤んでいるようだ。
なにも言わないほうがいいな。
スネイプはそう感じとり、仕事へ戻ろうとした。
『セブルス、ありがとう、ね?』
「フルーツティーならいつでもーーー」
『そうじゃなくて、気を遣ってくれて』
「そんな覚えはない。」
『セブルス、私ね、トム.........うんう、ヴォルデモートと会ったの、』
「なん、だと」
スネイプは目を見開いた。
『居場所は、わかってるわよね?』
「.........」
『お願い、ハリーをまもって』
ユミは自分のその言葉にビックリした。
トムの心配じゃなくて、ハリーの心配をしている。
私は狂ったのだろうか。
それに、スネイプも気づいたようで、瞬きで返事をした。
「貴様は私が護ってやる」
『トム、は?』
トムは誰に護ってもらえるの?
また独りになるの?
そんなの.........
辛すぎるよ。
「なぜそこまで気にする」
彼女を傷つけたのは、ヤツだ。
なのに.........
『何でかな......私を拾ってくれたのは彼だし.......寂しいときにいつも側にいてくれて、最期、愛してるって言ってくれたから、かな。』
なぜ、ヤツの話をするときに、幸せそうな顔をする。
スネイプは、もうユミを止められないと思った。
まだ小さいくせに、大人びた表情。
「昔と全く変わらんな。」
スネイプは口の端を片方だけ器用にあげた。
『そう?』
ユミがティーカップをおいて一歩、スネイプに近づいた。
彼女が、だっこ、のポーズをしたため、スネイプは両腕を広げた。
「っ、思いっきり飛び込んでくるな、馬鹿者」
『セブルスったら、おじちゃんになっちゃいまちたか〜』
イラッ
「出ていくがよい」
『うそだよ!セブルス、ずっと変わらない!ちょーイケメン、大好き、愛してる』
慌てて訂正をするユミが可愛らしくて、スネイプは微笑んだ。
「これから、どうするつもりだ」
『どうもなにも、流れに乗るだけだよ?』
ユミなりに、考えがあるのだろうか。
「あちらへいくなら、相当な覚悟が必要だ」
ユミはコクリと頷いた。
「わたしが死んーーー」
そこでドアを叩く音が。
「ッチ、入れ」
「スネイプ先生、レポートをお持ちしま.........」
ハッフルパフの、セドリック・ディゴリーか。
彼はスネイプをみて驚いた顔をした。
「なんだ」
スネイプはセドリックを睨む。
早く出ていけ、と言わんばかりに。
「い、いえ。その、先生がグリフィンドール生と仲がいいなんて.....冗談ですよ、睨まないでください。悪く思わないでくださいね」
セドリックは爽やかに笑った。
『えーっと、貴方はー.......確か、』
「覚えててくれたのか?入学式の日に、会ったよね。」
いつまで話を続ける気だ。
スネイプはイライラしていた。
ユミはそれに素早く気付き、セドリックにこういった。
『ええ。ミスターディゴリー?またお話ししましょうね』
あまりにも早口で言ったために、イライラしているように思われてしまっただろうか。
セドリックは気にしたようすもなく、ただ笑顔で頷いた。
バタン。
『で、さっきの続きしよ?』
スネイプは思った。
我輩は今.........とんでもないことを.......
ユミを膝の上に置いていたことを忘れていた。
ああ、ディゴリーに、みられた。
記憶でも消しておこうか。
くそ.........
『どーしたの、セブルス、そんな怖いかおして......』
ユミは思い付いたように続けた。
『あ!さっきディゴリーさんに見られたのが恥ずかしかったとか?私はそんなこと、微塵も思ってないけどねー!!』
「記憶を消しておけ(、なんて小娘だ
!)」
『消さないでも言わないよ、あの人。言ったら......抹殺』
最後の部分だけ耳元で言われスネイプはビクッとする。
「はぁ.........お前がいると心臓がもたん。。。」
『おほめの言葉、ありがとうございます』
ユミはニコニコして部屋を出ていった。
「なんだったのだ......泣いたり笑ったり.........」
独り部屋に取り残され、スネイプはレポートを採点しはじめた。
ユミは昔から不安を表に出さない子だった。
いつもああやって独りで泣いていたのか。