賢者の石

□悪い夢
1ページ/7ページ




スネイプはフルーツティーを飲むユミを長い間眺めていた。



『セブルス.........これ、美味しい』



まだ瞳が潤んでいるようだ。


なにも言わないほうがいいな。
スネイプはそう感じとり、仕事へ戻ろうとした。


『セブルス、ありがとう、ね?』

「フルーツティーならいつでもーーー」
『そうじゃなくて、気を遣ってくれて』

「そんな覚えはない。」

『セブルス、私ね、トム.........うんう、ヴォルデモートと会ったの、』


「なん、だと」

スネイプは目を見開いた。

『居場所は、わかってるわよね?』



「.........」


『お願い、ハリーをまもって』


ユミは自分のその言葉にビックリした。


トムの心配じゃなくて、ハリーの心配をしている。


私は狂ったのだろうか。



それに、スネイプも気づいたようで、瞬きで返事をした。





「貴様は私が護ってやる」



『トム、は?』

トムは誰に護ってもらえるの?
また独りになるの?
そんなの.........
辛すぎるよ。




「なぜそこまで気にする」



彼女を傷つけたのは、ヤツだ。
なのに.........



『何でかな......私を拾ってくれたのは彼だし.......寂しいときにいつも側にいてくれて、最期、愛してるって言ってくれたから、かな。』


なぜ、ヤツの話をするときに、幸せそうな顔をする。

スネイプは、もうユミを止められないと思った。



まだ小さいくせに、大人びた表情。

「昔と全く変わらんな。」
スネイプは口の端を片方だけ器用にあげた。



『そう?』


ユミがティーカップをおいて一歩、スネイプに近づいた。


彼女が、だっこ、のポーズをしたため、スネイプは両腕を広げた。


「っ、思いっきり飛び込んでくるな、馬鹿者」

『セブルスったら、おじちゃんになっちゃいまちたか〜』


イラッ

「出ていくがよい」

『うそだよ!セブルス、ずっと変わらない!ちょーイケメン、大好き、愛してる』

慌てて訂正をするユミが可愛らしくて、スネイプは微笑んだ。



「これから、どうするつもりだ」


『どうもなにも、流れに乗るだけだよ?』

ユミなりに、考えがあるのだろうか。


「あちらへいくなら、相当な覚悟が必要だ」


ユミはコクリと頷いた。



「わたしが死んーーー」
そこでドアを叩く音が。
「ッチ、入れ」
「スネイプ先生、レポートをお持ちしま.........」


ハッフルパフの、セドリック・ディゴリーか。

彼はスネイプをみて驚いた顔をした。
「なんだ」
スネイプはセドリックを睨む。
早く出ていけ、と言わんばかりに。



「い、いえ。その、先生がグリフィンドール生と仲がいいなんて.....冗談ですよ、睨まないでください。悪く思わないでくださいね」


セドリックは爽やかに笑った。



『えーっと、貴方はー.......確か、』

「覚えててくれたのか?入学式の日に、会ったよね。」

いつまで話を続ける気だ。



スネイプはイライラしていた。


ユミはそれに素早く気付き、セドリックにこういった。


『ええ。ミスターディゴリー?またお話ししましょうね』

あまりにも早口で言ったために、イライラしているように思われてしまっただろうか。


セドリックは気にしたようすもなく、ただ笑顔で頷いた。




バタン。




『で、さっきの続きしよ?』

スネイプは思った。
我輩は今.........とんでもないことを.......
ユミを膝の上に置いていたことを忘れていた。
ああ、ディゴリーに、みられた。
記憶でも消しておこうか。
くそ.........

『どーしたの、セブルス、そんな怖いかおして......』

ユミは思い付いたように続けた。
『あ!さっきディゴリーさんに見られたのが恥ずかしかったとか?私はそんなこと、微塵も思ってないけどねー!!』


「記憶を消しておけ(、なんて小娘だ
!)」

『消さないでも言わないよ、あの人。言ったら......抹殺』


最後の部分だけ耳元で言われスネイプはビクッとする。



「はぁ.........お前がいると心臓がもたん。。。」






『おほめの言葉、ありがとうございます』

ユミはニコニコして部屋を出ていった。




「なんだったのだ......泣いたり笑ったり.........」


独り部屋に取り残され、スネイプはレポートを採点しはじめた。

ユミは昔から不安を表に出さない子だった。


いつもああやって独りで泣いていたのか。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ