賢者の石
□私の知らない世界
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私、ユミ・カンザキは一人、ホグワーツ入学を迎えようとしていた。
見覚えのある駅に私はいた。
自分がどこから来たのかがわからなかった。
ただ気づいたら、この荷物を持っており、制服らしきものを着ていたのだ。
何も思い出せない。
知っているのは、自分の名前。
それから、今からホグワーツへ行くということ。
ホグワーツは学校で、魔法使いの学校らしいのだが、なぜ自分が知っているのだろう。
誰かに教えてもらった覚えもないのに。
私の周りには子供たちがいた。
そう、それが、『私が子供』だと、気づくきっかけとなる。
子供たちの隣には、親がいた。
私の隣には誰もいない。
ペットもいないし、友達もいない。
自分は記憶喪失なのだろうか?
それならば、誰かが教えてくれてもいいはずなのだが。
私は、何もわからないまま、9と4分の3番線という、わけのわからない札を見上げていた。
「君、もうすぐ発車しちゃうよ。ホグワーツに行くなら早く乗りなよ。」
自分より年上と思われる赤毛の少年に話しかけられ、うなずいた。
空いているコンパートメントの席を見つけようとしたが、外から見ても、どこもいっぱいだ。
「席かい?手伝うよ。」
その少年はにっこりと笑って列車から降りて、私の荷物を中に運んでくれた。
『あ........』
自分の声を久々に聞く、そんな感じがした。
「この辺だと、ココしか空いてないな。僕のところでも空いてるけど来る?」
少年は、誰もいないところをみつけてくれたが、私は一人でいることに心細さを覚え、首を縦に振ってしまった。
「いいよ、こっち。」
赤毛の少年は、私を先に座らせてくれた。
『ありがとうございます。』
「いや、お礼を言われるようなことしてないよ。」
彼の自然な笑顔を見つめていると、瓜二つの男の子たちがコンパートメントの中に入ってきた。
「おや?」
「兄貴が女の子を」
「ついに春の到来か??」
「「よかったな!!」」
似てる.......
この人の弟さんたちかな。
「ごめんね、うるさい弟で。」