賢者の石
□みぞの鏡
2ページ/6ページ
クィレル先生の手が、再び私の髪を撫でる。
「あの方が君をお呼びだ。賢者の石を手に入れさえすれば.........」
あの方?
賢者の石?
「!!っ誰かがくる、行け」
クィレル先生、私に何か用事があったんじゃないの?
さっきも魔法かけようとしたし.........
私を失神させてまた何かしようとした?
クィレル先生が指差した方向へ迷わず走った。
部屋から出て廊下へ、クィレル先生と壁を一枚挟んだ状態だ。
足を動かそうとした瞬間、猫なで声が聞こえた。
「クィレル。貴様がなぜここにいる。」
「あ、あぁ、セ、セブルス」
いつものおどおどしたクィレル先生の声が聞こえた。
「ユミ・カンザキを見かけませんでしたかな?彼女の香りがするのだが」
セ、セブルス。香りって、そんな、そんな、、、いやん///(⬅え)
「いえ、わ、わたしは、こ、ここをたまたま、と、通りかかっただけでっ」
クィレル先生の声が近くなってきた。
おそらくセブルスに壁ドンでもされているのだろう.......
『っ、ぅ、......』
左目に鋭い痛みが走る。
早く寮に戻らなければ。
左目がズキズキして足取りが重い。というより、上手く歩けない。
ーーーー
やっとの思いでたどり着いた自分の部屋は、落ち着ける暖かさだった。
ハーマイオニーはまだ図書館かなぁ。
暇すぎてベッドで横になった。
なんで左目だけ赤くなるのかな。
考えてもわからないものはわからない。
クィレル先生は何か知ってるみたいだったけど。
今度冬休みにでも聞いてみよーっと。
静かだなぁ。
どこかからマシュマロを焼いたような甘い匂いがする。
誰か焼いてるのかな。
私って、今何歳だっけ?
トムは何歳かな.........
今どこで何をしてるのかな?
ユミは、眠りの世界へと入っていった。
ーーーーー
≪あと、少しだ、あと少しでお前に会える≫
トム?
ほんと?
よかったぁ。
もう安心だねーーー
≪誰にも渡さない、≫
うん、ずっと側にいてね。
ーーーーー
「ユミ」
ん?なぁに、トム。
「ユミってばぁ」
そんなに揺すぶらないで、トム。
あ、あれ?トムってそんな髪長かったっけ?黒髪じゃないの?
『は、ハーマイオニー.........おはよ〜』
「もう。可愛い子ね。夕食をとりに大広間に行きましょ?」
ハーマイオニーに手をとられて、眠い頭で起き上がった。
ハーマイオニーに手を引かれて階段をおりる。
『ねぇねぇ、ハーマイオニー。ハーマイオニーは会いたい人とかいるー?』
「会いたい人?そうね、両親かしら。私が魔法使いだって知ったとき、すごく喜んでくれたこと、今でも忘れられないわ。」
『そうなんだ、ハーマイオニーの両親ってどんな人なの?』
「は、歯医者をやってて、二人とも仲が良くて優しいわ。」
ハーマイオニーは照れながら言った。
両親、か。
私の両親は何してるんだろう。
トムに会ったことないよね?
『すごいわね!歯医者だなんて。』
「あなた、マグルじゃないのに歯医者って知ってるのね!」
『うん、昔(トムに隠れて)マグルについて書かれてる本をよく読んだの。』
ハーマイオニーはそれを聞いて嬉しそうにした。
「私、てっきり、貴女はマグルに興味ないかと........」
そうよね、スリザリン寄りだもの。
『ちがうわ。』
「ユミって、ほんとに勉強家ね。ところで、貴女の一番会いたい人は誰?」
もちろん、
『私も、育ててくれた人かなぁ。』
「どんな人なの?」
どんな人、どんな人かな。
『怒ると怖いけど(人を殺すし)照れたときとか笑ったときとかはすごく素敵なの。それに、私には優しいわ。』
ハンサムだし、年齢を感じさせないし。
胸の奥が痛いよ、トム.......
「そうなのね、それって素敵だわ。今は?その人は何をされてるの?」
『うーん、今は音信不通で.......どこにいるのかわからないの。』
ハーマイオニーはユミが切なそうな顔をしていることに気付き、彼女の手を両手で包んだ。
「その人も今、ユミのことを考えてるわ。」
『そうだといいな。.........ありがとう、ハーマイオニー。』