子は親に似る
□波の国 T
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ユラユラと身体が左右に揺られ、何だか不思議な気分だ。
「すごい霧ね、前が見えない!」
サクラの言う通り、辺り一面濃い霧に覆われ何も見えない。
「そろそろ橋が見える。その橋沿いに行くと波の国がある」
フゥリュウ達一同は、タズナさんの知り合いの方の船に乗せてもらい波の国に向かっていた。 この方は、濃い霧の中でも波の国までのルートを全て知っているベテランの舟渡りし。
この方が居なければ、 フゥリュウ達は波の国まで行くのは難しかっただろう。
「ん?何か見えてきた」
フゥリュウの視線の先に目を向ける第7班。霧の中からシルエットが浮かび上がってきた。
「うひょう!でけェーーー!!」
ナルトが驚くのも無理もない。
シルエットの正体は、タズナさんが作っている橋だった。
「コ……コラ!静かにしてくれ!この霧に隠れて船出してんだ。エンジン切って手漕ぎでな」
舟渡りしは、冷汗を流しナルトを注意する。そして、辺りを確認してから再び口を開く。
「ガトーに見つかったら大変なことになる」
ナルトは、無意識に声が出ぬように自身の手で口を塞ぐ。
ガトー。舟渡りしから出た言葉。ガトーという人は、 フゥリュウ達の依頼主タズナさんの命を狙う人物。
ガトーは、海運会社の大富豪であり、表向きは海運会社として活動しているが、裏ではギャングや忍びを使い、麻薬や禁制品の密売……企業や国の乗っ取りといった悪どい商売をし業としている男である。
何故タズナさんが狙われているのか……。それは、海上交通・運搬を牛耳ったが、建設中である橋が完成してしまえば波の国を"独占"することが出来ないからだ。だから、橋作りをしているタズナさんが邪魔となっているのだ。
「タズナ……どうやらここまでは気付かれてないようだが…………念の為、マングローブのある街水道を隠れながら陸に上がるルートを通る」
「すまん」
そういって、船は水上トンネルに入る。
波の国出身の2人の話を聞きながら フゥリュウは、カカシの袖を引っ張る。
「ん?どうした」
「カカシ先生。マングローブって何?」
「それはね、暖かい地域の海岸や海の潮が入ってくる河口などに育つ植物群落のことだ」
「へーーー」
フゥリュウは、説明を聞いてもピンとこなかったが一応頷いた。
「見るのが一番分かりやすいかもね」
フゥリュウの考えている事が分かっていたカカシは、船の先端の先を見つめる。
「あれだよ」
トンネルを抜け波の国に入った。
「これが……マングローブ…」
波の国に入った先に見えたのは、水の中に生えている巨木達。水の森と例えた方が分かりやすいだろう。
そんな水の森を フゥリュウは、神秘的なものを見たかのように目を輝かせた。
水の森をゆっくりと進みながら舟渡りしは、船着場に フゥリュウ達を降ろした。
「オレはここまでだ。それじゃあな、気ィつけろ」
「あぁ、超悪かったな」
舟渡りしは、手漕ぎからエンジン始動に変えその場を急いで去った。
「よーしィ!ワシを家まで無事送り届けてくれよ」
「はいはい」
面倒なことが一つ増えたことに溜息をついたカカシだった。