囲愛
□2話
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ずっと、逃げ続けていた。
両親は多額の借金を置いたまま蒸発。
親戚たちも自分の身の可愛さに私とは関わらないようにしていた。……まぁ、当然だとは思う。
大学にも行けなくなって、月々の返済なんて膨らむ利息にさえ追い付かない。
借金返済させるために、裏の世界に引きずり込まれようとした寸前に何とか逃げ出したものの、そう簡単に逃げられないと思いながらも、毎日怯えながら見つからないように命を繋いできた。
でも、所持金もそろそろ限界になりつつあったある日、とうとう目の前が暗くなって倒れこんでしまった。
(………もう、いっそ……死んでもいいかな……)
倒れる寸前、そう思ったりもした。
ふと気が付くと、暗くはないものの窓もなく、私が寝ているベッドと小さなテーブルに椅子しかないシンプルすぎる部屋だった。
そして、私が起きるのを見計らったかのように、ギィッとドアが開いた。
「……あぁ…目が覚めたか」
見た目は、どこかのエリートを思わせるような雰囲気を漂わせている男を見た瞬間、私はゾクリと冷や汗が流れたような気がした。
まだ表面には出ていないが、私には今までに同じような匂いをした男たちに会っていたから。
(………あいつらと…同じ……裏の奴……)
「……フッ……そんなに怯えることはない…」
男は言いながら、入り口近くの椅子に座って私を見据えた。
「………刹那…か。…両親は多額の借金を置いたまま蒸発、親戚どもも交流はなし。」
ペラベラと事情を話していく男に、私は目を見開くしかなかった。
どうしてそんなことまで知ってるのかと一瞬考えたけど、裏の人間なら何かそういうネットワークもあるんだろうと思い至ったと同時に、本格的に逃げ場がなくなったと観念せざるを得なくなったのだ。
(……踏ん張れ……まだ、負けるな……)
心の中で言い聞かせながら、震えだす体をギュッと自分で抱き締めた。
「さぁ……交換条件といこうか?」
「……………え?」
いきなり言われた言葉に、私は思わず顔を上げた。