素直に伝えられない【速度松】

□言えない
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僕の名前は松野チョロ松。松野家に生まれた六つ子の中の三男だ。とは言いつつ、僕がこの六つ子の中で唯一の常識人だから、本来なら僕が長男でみんなをまとめる役にならなきゃなんだけどね。長男が一番しっかりしてないし…
「なぁ、チョロ松ー」
背中から自分の名前を呼ぶ声が聞こえてビクッと体が反応した。
「な、なんだよおそ松兄さん」
そう、今僕の名前を呼んだのは六つ子の長男、『松野おそ松』。彼は僕の兄であり、僕の…いやなんでもない。とにかく、彼は一見、真面目そうで一番不真面目なのである。
「いやさー、金持ってっかなーって思ってさー」
金遣いがとても荒い。
「貸さないよ。どうせ変な賭けとかに使うだろうし」
そんなことでいちいちお金なんて貸してられない。
「なんだよー。せっかくお前のためにイイもん買ってこようと思ったのにさ。もういい、カラ松んとこ行ってくる!」
それを聞いた瞬間、何故か変に期待をしてしまった。何を期待したのだろうか。
「…兄さん待って。」
「んあ?」
「何…買おうとしてんの?」
おもちゃか何かだろ。
「何ってー…別に大したもんじゃねぇよ」
パチんだろどうせ。
「それって…僕も行けないの?」
チビ太のとこで酔いつぶれようとか思ってんだろ。
「あー……来てもいいけど、お前変な誤解しそうで怖いんだよなー」
女とでも会うの?
「誤解って…そんなに変なものなの?」
あれ、そうなの。
「変っつーか…」

兄さんは赤面した。

それを見た僕は、「ああ、この期待は、これだったのかな」と確信した。

「兄さん、僕兄さんのこと…」

そう言いかけたところだった。
「あーー!!!そういえばトド松に頼まれてたもんがあったわ!悪いな、チョロ松!」
「ちょ、兄さん!」
僕の呼びにも動じず、走って外へ飛び出したのであった。

「…やっぱ変だよなぁ。兄弟のことが好きだなんて」

一人呟き、そのまま寝転がった。
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