短編
□遊び「十四松」
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「ちょいちょいちょい」
「何ー?」
「何これ」
「何がー?」
「だから、何で私こんな状態になってんの」
いつものように松野家に来て、いつものように優雅な昼寝をさせてもらっていた。の、だが。
眼が覚めるとこの始末。十四松は私を巻き寿司のように掛け布団でぐるぐる巻きにしていた。これ、女子に対する行動ですか?
「なんかこうしたら、美味しそうだよねー」
「変なこと言わないで。早く出してよ」
「やだー」
「やだじゃないの」
突然目の前で十四松が顔をのぞかせ、数ミリの距離を開け私を見つめる。にっこりと笑い、悪戯好きな少年のようにクスクス笑う。
‥‥か、可愛い。
「みい、すっごく美味しそう!」
「どういう意味よ」
「avで出てきた言葉」
「十四松って結構そういう知識あるよね」
「ひひひー」
ぱたぱたと袖で隠れた両手を叩く。ぐい、と更に前のめりに出る。耳の下にそっとキスを落とされる。
「あー食べたいなーみいのこと」
「だから、軽率にそういうの言っちゃ駄目」
「軽率?え?何で?」
「え?何でって‥‥何で?」
「僕は本気でみいのこと、食べたいけどー?」
あっさりと変態チックな発言を晒す十四松。しばらくの沈黙。みるみるうちに顔が熱くなる私。
十四松はそれを愉しげにみつめ、がばっと布団で巻かれた私の上に乗る。
「よーし!このままごろごろしてごろごろしよーーう!」
「日本語おかしいって」
そう言いながら、十四松と一緒にころころ転がる私。次第に布団から解放され、十四松の胸の中におさまる私。
にこにこと笑う彼の顔を見上げ、つい私も微笑む。
意味は何にもないけど、綻ぶ午後三時の遊び。