短編

□こたつ「全松」
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ぺらりと雑誌をめくるトド松。
ぼりぼりせんべいを頬張るおそ松。
替え歌で上の空な十四松。
猫と丸まっている一松。
ニャーちゃんの切り抜きをずっと見つめるチョロ松。
鏡の手入れをするカラ松。


「‥‥ねえ」
「「「「「「何?」」」」」」
「七人も同じこたつは、きつくない?」
「みいはこの家の住人じゃないんだから、みいが抜ければいいじゃん」
「うん。まあ。トッティの言う通りだね。でもちょっと傷ついた」
「へへ、ごめんごめん」

雑誌から目を離し、にやりとトド松が笑う。目が合った瞬間、誰かの足が私の脇腹にまで到達した。

「いった!ちょっとトド松!」
「へ?僕じゃないよ」
「平気で嘘つくんだからこいつは‥‥いっ!」

今度は別方向から足が飛んできた。私の足の裏をぐりぐりと踏みつける。
皆は何もないような表情で私と目を合わさない。ああ、そう。やってやろうじゃない。
私はその足を蹴り返そうと身を反転させた。が、また別の方向から誰かの足。ぐり、と腹を押す仕草をする。そーっと、その足は服の中に入ろうとする。

「おそ松ね」
「いっ!!」
「一回死んで」
「お前、小指折り曲げるとかどんな神経してんだよ‥‥」


息をつく前に、今度は誰かの指が私の太ももをつついた。

「脂肪多いんじゃない?」

一松が素っ気なくぼやく。ほんと、あっちもこっちもなんなの一体‥‥。

「ばあ!!」
「うわ!!」

突然隣から、十四松がこたつの下をくぐり飛び出した。目を丸くする私を見てきゃっきゃ騒ぎ立てる。

「みい‥‥」

カラ松は片腕で頭をささえた形で私の方に寝転ぶ。ぼん、ぼんと床を叩き隣へ来いという無言のメッセージを送られるが、すぐに私は拒否をする。キメていただろうその表情に、少しヒビが入った。


「みいっ」
「わっ!今度はこっちから‥‥」

また反対隣から人がにょきっと飛び出す。チョロ松は心底嬉しそうにニャーちゃんの切り抜きを見せる。

「この前みいもニャーちゃんに興味があるって言ってただろ?だからほら、みいの分も残しといた!」
「わ、ほんとだ、サンキュー!これこの前駅前でやってたライブじゃん」
「ね、ね、可愛いよねー!!特にさあ、いつもはちゃんと髪をセットして一本もはねてないんだけど、この日はちょっとボサボサだったんだ。でもこれが逆に色っぽくと見えたっていうかさあ!」
「もー!チョロ松兄さんばっかりずるいよ!」

トド松が私とチョロ松の間にむりやり割り込み、端にいた十四松は苦しそうな悲鳴をあげる。私は急いで十四松の上半身を外に出してあげたが、今度の災難はこたつの中から襲ってきた。

「あー暑いけど生身の枕は気持ちいわ」
「ちょっと!人の脚の上で寝ないでってばっ」
おそ松を真似たのか、もう一人の頭も私の身体の上に乗る。
「確かに暑い」
「じゃあ退いてよ一松!」
「あはは、みいが困ってるところみんの面白いねー!」
「十四松!!」
「俺が入れるスペースどこにもないいい!」
「そんなことで泣くなカラ松!!」
「お前らいい加減にしろよ!今はニャーちゃんの話をしてるんだぞ!せめてみいに会話ができる余裕くらい与えてよ!」
「‥‥‥‥」


あー暑い暑い暑い暑い‥‥そんなくっつかれたら‥‥


「暑いってばーー!!」




ト(ねえねえ、誰かこたつの中でさ、どさくさに紛れてみいのバストサイズとか測ってみてよ)
カ(‥‥どさくさにって言っても、バレるだろ?)
十(いや、そうでもなかったよ!)
(((((!!!???)))))





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