短編

□泣きたいよ「十四松」
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僕の兄弟はみんなやさしい。わちゃわちゃするし、びゅんびゅん物はぶっとぶし、カラ松兄さんいじめるし、お金ないのに居酒屋とか行っちゃうけど、でも、本当はすっごくやさしくて誰よりも僕のことを見守ってくれている。

男どうしだから、そんなに深く考えたりはしてないんだろうけど、僕にとってはそのやさしさが一番嬉しいんだ。


でも、だから、泣きたい時とかは余計にそれがくるしい。
僕が悲しんだらみんなも悲しそうな顔で心配する。僕が元気をなくせばみんなも元気をなくして心配する。あんまり、そういう顔はさせたくないんだよなあ。
心配なんて、かけさせたくない。

だから、意外と直球勝負な行動に出るのは楽なんだよ。ドブ川泳いだらスピード感だけで我を忘れるし、ぐにゃぐにゃ身体曲げて舞ったらそれはそれで頭真っ白になれる。
だから、無理なんてしてないんだよ。僕は望んでそうしてるんだ。楽しくなった時も、悲しくなった時も、変わらず同じ行動すればきもちがぐらぐらすることもないよ。
悲しみも、忘れるよ。





「泣いていいよ」


だから、みいがそう言ってきたときは、正直ずっとつくっていた笑顔もくずれちゃった。

うにゃうにゃして触手を見せていたら、みいは悲しそうな目で僕の頭を撫でた。僕の腕は、動かない。


「え、何でー!?」
「辛そうな顔してるよ」
「んーじゃあ熱かな?でもさっきまで普通にやきうしてたし大丈夫だよ!」



‥‥あれ。僕顔に出てた?
いけないいけない。よりにもよってみいに心配かけさせるのはやだよ。もっと笑えばばれないかな。




「どうしていつもそうやって、我慢しようとするの?」



あれ?何で?今度はちゃんと笑ってるのに。何で?何でそんなこと言うの?



「私の前では、泣いていいんだよ」






あ。



あ。


ずっと忘れてたのに。

みいのせいで、悲しい記憶が蘇っちゃう。

ほんのささいなことだよ。



通りがかりの人に、ちょっと悪口を言われただけだよ。
そんなことで泣かないよ。
そんなことで。




「‥‥あ」


熱くなる目。



「あれ」


つくっていた笑顔が、するすると壊れていく。
ぎゅっと抱きしめてくれるみい
の腕に、僕は無意識にしがみつく。
ずっと我慢していたものがいっぱい外にこぼれちゃう。でも、そんな優しいみいに甘えて、僕は何度もみいにしがみつく。



「‥‥泣いて、いーの?」




「うん」




あまりにも優しい声か、全身から力を奪っていく。


ずっと湿ったままの眼球から、ぽろりと涙がこぼれ落ちる。

何回も何回も何回も何回も何回も、僕は泣く。



あれ。泣くって、すっごく楽なんだなあ








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