短編
□隠す「一松」:微裏
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みいが今日もチョロ松と近くで喋ってる。ニャーちゃん繋がり話が合うんだろうけど、少なくとも向こうは下心もあったりするんだよ。ほら、だって今ここには俺しかいないじゃん。だからそんな顔も堂々と晒せるんだよ。
俺、そういうのわかるから。
ああやってニャーちゃんに釘つけなってるけど、時々みいと肌が触れ合ったら顔赤くして袖で隠すんだよ。
いかにも童貞って感じ。なのに何でそんなことにも気づかないかな。
あ、またチョロ松の肩に当たってる。
また。
また。
‥‥‥。
「じゃあちょっとコンビニ行ってくるね」
「あ、待って私も‥‥‥」
気づけば俺はみいの腕を掴んでいた。
「‥‥‥?」
気づかないチョロ松はそのまま廊下を歩み、みいは不思議そうに目を丸くする。
だから、そういう反応が一番腹立つんだよ。
互いに黙り込んだまま、玄関の扉の音を聞く。しん、と静まった居間の中央で、俺は更にその腕を引き寄せた。
ふわりと髪から漂う香りに、ぞくりとした興奮を覚える。
「どうかしたの?」
ちくちくしていた感情が揺れる。あまりにも素朴で、純粋な瞳の向こう。
そっと部屋の隅にある救急箱へ手を伸ばす。中から太い横幅の包帯を取り出し、するすると解いて解いてハサミで切り取る。
まだ状況がわかっていないみいの瞼に触れ、閉じさせる。
ぐるぐると包帯でその目を覆っていく。
真っ暗な世界。
何も見えない世界。
誰も見れない世界。
俺の声だけが、頼りな世界。
「ちょっとーまた変なことやってるー。何これ?」
「別に」
あ。やばい。
俺はみいにバレないようにと、膨らんだ下半身を後方にずらす。
こんなことで興奮してるなんてばれたら、さすがにまずい。万一ばれたら、きっと次からこういうこともさせてくれない。
見えないよー。
子猫のように、可愛い声で笑う。俺を探すふりをして、手をわたわたする仕草。
ぞく、ぞく。煮え立つ快感と、独占欲。
俺はそっと包帯の上から、閉ざされたみいの目に舌を這い、優しく抱き寄せる。ちょっと崩せば壊れてしまいそうなその純情に、いつも醜い俺の心か浄化される。
「くすぐったい」
「今、俺が何してるかわかんの?」
「んー‥‥でも、目になんかしてる?」
舌で丁寧に這う。するりと包帯からみいの頬へずらす。ぴくり、と肩を揺らしたみいを見て、俺は声を出さずに笑みを浮かべた。
俺しか見えないみい。
そんな彼女に興奮を覚える、
そんな醜いぼく。