短編
□理性への狭間
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おそ松兄さんは気がきく。女の子の前では赤面になってしどろもどろするもの、なんだかんだ会話は上手いしノリも良い。
だから今日も、みいはおそ松兄さんと仲良く駄弁ってる。
初めてみいと出会って、初めて女の子と普通に話せるようになった僕。六つ子が揃ったところをどうしても見たいって言うから、僕は渋々彼女を家に連れてきた。
案の定、みいは皆に気に入られ、そのなかでもおそ松兄さんとは互いに気が合ったようだ。
居間ではずっと二人で趣味の話をするし、今度は二人でどこか遊びに行こうとまで言っていた。
それからみいと過ごす時間は、少しずつ減っていったんだ。確実に、淡々と、彼女はおそ松兄さんに魅了されていった。
「はあ?つきあう?ないないそんなの」
笑ってごまかしながらも、みいはまたいつものようにおそ松兄さんを起こしに部屋へ向かっていく。
ゆらゆら揺れる小さな背中が、僕の中の化け物を叩き起こす。
嘘つき。僕と同じで、孤独な人間だって言ってたくせに。
嘘つき。嘘つき。嘘つき嘘つき嘘つき。
孤独な人間にとっては、孤独な人間だけが心の頼りなんだよ。
「一松?」
不思議そうに、追いかけてきた僕を見上げていた。昼寝にふけっていゆおそ松兄さんにバレないよう、僕は表情を変えずにその白い肌を打った。
「‥‥いった」
僕は全身から湧き上がる体温の上昇に溶け込んでいく。みいの腕を引っ張り、床へ突き倒す。
苦しそうな顔を浮かべる彼女に、僕は半身から覆い被さってすぐに目を見開いた。彼女は怯えていた。
「俺以外見なくていい」
引っ張り上げていたみいの腕を優しく引き寄せ、口付けを落とした。ゆっくりと舌で彼女の指を這いながら、片手で首を持ち上げる。
嫌だと叫ぼうとする口を、無理矢理僕は塞ぎ込む。吐息と嗚咽の狭間を泳ぐように、みいは僕と何度も舌を絡ませあった。熱いものが染み込み、頬がにわかに火照る。
そのまま服を剥ぎ取り、心底快感に浸りながら彼女の膨らみを口に含んだ。一瞬喘いで髪を揺らした様子はまるでただのAV女優だった。
ぼくはふときがついた。
今、潤いに満ちた彼女の眼球には、僕だけが映っていた。その涙は止まることを知らないようだったが、それでもみいは僕だけを見ていた。
それが嬉しくて嬉しくて、たまらなくて、僕はみいの首元に顔を入れ込んだ。
彼女は小さな悲鳴をあげた。鮮やかに浮かんだ首元の傷を、舌で優しく覆ってあげた。
「‥‥さいってい」
悲しげに笑う君に、僕は普段隠し続けてきた性癖を脳裏に描く。気持ち悪いって思われたくなくて隠してきた思考、全てを描いた。
本当は好きな子が全裸のまま縄で縛られたり、なんてしているとすごく興奮するんだ。
目隠しされて僕しか行けない場所で泣きながら乞いてる、なんてしているとすごく興奮するんだ。
でも、そんなこと考えてたら、ひいちゃうできょ?嫌うでしょ?だから必死に隠してきたんだよ。
でも、もう、いいや。
だって、無理矢理にでもしないと僕のこと見てくれないんでしょ?
「逃げちゃだめ。殺すよ?」
びくりとみいは肩を震わせた。ジャージズボンのポケットから、僕はゆっくりと玩具の手錠を取り出した。
皆にばれないようにしないと。
ここからだと一番近いのは、家裏の倉庫かな。あそこなら皆は行くこともないし、鍵も僕だけが見える位置に設置して________。
僕は涙を流しながら、壊れた理性に堕ちてった。