<リクエスト置き場>
□はるなさんへ
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おそ松は最近、貧乏ゆすりが激しい。パチンコで負けたって兄弟に殴られたってイライラしないような人なのに、何があったのかやたらと私を睨んでふてくされている。
そんな様子がここ三日。勿論私に何か心当たりがあるわけでもない。別におそ松の金をすったわけでもないし、意地悪したわけでもない。
「どうしてそんな怒ってんの?」
だからこう言って怒っても悪くないよね。
「あ?」
なのにおそ松は更に顔を険悪そうにしかめる。
「そうやっててもう三日も経ってるよ」
「知らねー」
「ねえ何で?」
「何でもねーよ」
「何で怒ってるのか言ってよ!」
「別に怒ってないって言ってるじゃん!」
あまりにも大きな怒声を出されたもので、私はつい言葉を呑み込んだ。おそ松のつりあがった目は今まで見たことないくらいくらい暗く、険しく、一瞬だけ切なそうに変わる。
‥‥私、なんかしたのかな?
「私に怒ってるの?」
「‥‥」
「黙ってちゃわかんないじゃない」
「‥‥」
「‥‥」
「‥‥」
「‥‥ねえってば!!」
「うっせーなこのビッチ女!!」
‥‥え?
「び、びっち女?」
おそ松は少し眉をあげ、しまったというような顔をする。だがもう諦めがついたかのように鼻で笑い、そっとその場から立ち上がる。
「お前もひでーよな。他の男とホテルでやりまくってるくせに、こうやって毎日家来て俺をその気にさせて。遊んでたんだろ?」
「な、なんの話してるの?」
「俺見たもん。みいが知らない男とホテル入るとこ」
「変なこと言わないでよ!ふざけてるの?」
「別にいーよ知らないふりは。俺、一松みたいに根暗じゃねーし、怒って殴ったりしないからさ」
そう言いながらも迫ってくるおそ松の顔と、後方へ退行する私。ぐるぐると思考を巡らし記憶を呼び起こそうとする。
ホテル?他の男?びっち?は?は?私の男友達なんて、松野一家のみんなくらいなんだけど。
ふいに、数日前の光景が頭をよぎる。男のような短髪で、焦げ茶の肌をしたあの子。趣味で始めたという男装っぽい服装。でもあの子はただの私の女友達。入ったのも、小さなホテルの真横にある雑貨屋。
‥‥もしかして、これのこと?
次の言葉を発そうとした時、おそ松はぐらりと私の身体を押し倒した。あまりにも咄嗟で大声を出そうとしたが、すぐにその口をおそ松が塞ぐ。
息をさせてくれない、苦しく激しい口付け。頭の中がくらくらする。
「‥‥‥っはあ、‥‥にすんのよ!!」
再びおそ松が舌を絡ませる。張り付くように張ってくるそれに、おそ松はすがっているようだった。
ぷち、ぷち、と引き裂くようにして服のボタンが外される。私が喋れないように口を手で覆いながら、おそ松は下着の下の膨らみを舐める。
掬うように、覆うように、求めるように、谷間の間から首筋まで舌を這う。
「聞いてよっ‥‥本当に誤解だってば‥んっ!」
突起を口にふくむ。拒絶を求めていたはずなのに、甘い声ばかりが出てしまう。そんな私を、とろんとした目で見つめている。
おそ松は私の下半身も露わにさせて、手慣れた手つきでズボンに手をかけた。
「‥‥‥そ、まつ‥」
「最後くらいいっしょになってよ」
低い声で囁く。じわりと心に何かが染みて、余計に私は悲しくなる。
何でそんなこと言うの?誤解だって言ってるじゃない。
だって、私はずっと前から、おそ松のことが____。
おそ松の口から、濃い吐息がはかれる。湿った私の中に、溶け込むようにして彼の膨らみがねじりこまれる。
電気に似た快感と、身体が繋がったことで密着する私とおそ松。
一瞬だけ、おそ松の口元に緩みが生まれる。
おそ松が上下に揺れると、自然と私の身体も上下する。どこからか現れ始める高揚感。頂点の兆しが見え始めると、私たちは互いの身体を求め合う。
「‥‥い、いくっ‥‥」
「‥‥‥」
私の身体が果てようとした瞬間、突然腰を止めたおそ松。数秒してその事実を把握した私は、自分でも情けないくらい悲しそうな顔をした。
「な、なん‥で‥‥?」
「‥‥お願いしてよ」
「えっ‥?」
「私をいかせてくださいって言ったら、いかせてあげる」
「そん、な‥急に‥‥」
「ほら‥早く」
「‥‥‥‥い‥‥か、せてください」
「俺以外の男は見ません」
「‥‥お、おそ松以外の男は、見ない」
「俺が死ぬほど好き」
「‥‥‥おそ松が、死ぬほど好きっ‥」
本心からもれた言葉。おそ松は嬉しそうに微笑み、再び腰を動かした。
さっきよりも速くなるスピードと、急上昇する一体感。私たちはすぐに、一つになろうと駆ける。
(ごめん。本当は途中で気付いたよ。ただの誤解だってこと)