yume。

□好きな人は誰?
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俺は一松。


六つ子の4番目。



1番中途半端な立ち位置。






そして、………


1番不利な立ち位置。





例えば、こんな時。



「なぁなぁ、一松……


どうすればネコたちと仲良くなれるんだ?」





お前はネコじゃなくて俺と仲良くしてればいいんだよ



『……そのサングラスでも貢げばいいんじゃない?』



わざとイジワルを言ってみる



サングラスを外し、マジマジと見つめる次男。




いや、冗談だって

それ宝物なんだろ……?



無言でそれを俺のヒザで寝ていたネコの前にチラつせるとネコはすごい勢いで飛びついた


「あっ……」




情けない声を出すカラ松兄さん



あーあ

もう……


俺が兄さんだったら良かったのに






『…ねぇ』



いきなり立ち上がった俺を見上げてくる





『兄さんはさ、俺とネコのどっちと仲良くしたいの…?』






これは兄さんを困らせる行為だと分かってはいるけど、

でも




困った顔が見てみたい








…案の定、困った顔をしている





ヘヘッ


俺のことでもっと困ればいい





『ねぇ、はっきりさせたいんだけどさ、



兄さんの、…好きな人は………誰?』





俺の言葉にビクッと反応する



すっごく可愛い。




「…俺は、」


言葉に詰まっている





そうだよ、俺は兄さんの言葉が欲しいのであって別に兄さんの答えには興味はない


…当然期待もしていない



人によっては後で万地固めをしてやるけどな




「…俺は、一松が好きだ


だから、一松が好きなネコたちとも仲良くしたいし、一松の好きなものなら俺も好きになりたい」





真剣な兄のまなざしに戸惑う俺



……なんで?


兄さんはおそ松兄さんが好きだったんじゃ…ないの……?





『ヘッ…


冗談よせよ、

本当は何も思ってないくせに。


兄弟だからって気を使わなくていいんだからさ』




兄さんは勢いよく首を横に振った



「ちがう…!」




兄さん、お願いだ


俺のことを認めないでくれ



この世のクズって呼んで

蔑んでくれ





「…おれは一松のこと大好きだぞ」



なんで、




「だから、ッ」




なんで…?




「…泣くなよ、一松」





泣いてる…?


俺が…………?




立ち上がって俺の頭に手をのせるとそれをゆるゆると顔に添えるように降ろしてきた



兄さんは俺のことをまっすぐに見つめていた




「大好きだよ、一松」




そう言うと俺の後頭部を優しく包み込んで自分の肩へと引き寄せた




自然と口から洩れる嗚咽



この距離でなら大丈夫


きっと今が素直になる時なんだろう







『俺も………大好き』






兄さんに届いたかは知らないが、頭を包む手の力が強くなったのを感じた

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