NARUTO

□トリップ6
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第3者side

病室には2人いた。この病室の主の紫乃と、波打つ長い黒髪と赤い瞳を持つ紅夕日だ。彼女は紫乃の精神的なケアを火影直々に任された。

だがケアは全く意味を成していない。それも紫乃が紅に怯えているのだ。最初は酷かった。紅が病室へ入って数秒で紫乃はあまり動かない手足を必死に動かして開いていた窓から飛び降りようとした。その時は紅も唖然としていたが、そこは忍者。慌てて紫乃を気絶させ、ベッドへ寝かした。

今はだいぶ慣れたようだが、布団を頭まで被ってベッドの端にいる。紅はため息をついた。お手上げだ。

ガラッ

「あら、イビキ。今日も?」

「・・・ああ」

入ってきたのはイビキだった。イビキは紫乃が病院へ移ってから、ほぼ毎日お見舞いに来ていた。その様子は、カカシやアスマ、紅や綱手などに「お前、偽物(か)?」と言われる程、普段のイビキからは予想も出来ない行動だった。

「じゃあ、私は用事があるから帰るわね。後は任せたわ、イビキ」

「ああ」

紅は立ち上がり、笑いながら(多少ニヤニヤしていたが)病室から出ていった。




残ったイビキはつっ立っているのも変なので、さっきまで紅が座っていた椅子に座った。そして無言。2人分の息遣いが聞こえる。

「・・・紫乃」

イビキは一言呼んだ。すると布団がもぞもぞ動き、ばっとぐしゃぐしゃの白髪が出てきた。

「イビキさん!!」

ぐしゃぐしゃの白髪・・・紫乃は黒目を輝かせながら、イビキへ抱き着いた。その表情は喜びで溢れていた。さながらその様子は、娘が父へ抱き着いているかのような、和む光景だった。実際は被害者と加害者だが。

さて、紫乃がこんなにもイビキへ懐いているのはおかしい。紅は紫乃が目を覚ました次の日から病室へ訪れているのに、拒絶されている。イビキはほぼ毎日とはいえ、紅より日数が少ないはずなのに、この懐きようの差は一体なんなのか・・・

それは記憶を失う前のことが関係していた。紫乃が紅と会ったのは火影室での1回だけ。しかも微量ながらも殺気と敵意を向けられたのだ。良い印象が残るはずが無いだろう。
その反対に、イビキとは何度も会っていた。でも回数が多いだけではこんなに懐かれるのは不自然。しかも記憶を失っているとはいえ、自分の手足を完全に壊すほど拷問した相手ならば、無意識とはいえ会うのも拒絶するだろう。なぜこんなに懐いたのか。それは拷問の時まで遡る。

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