NARUTO

□トリップ7
1ページ/1ページ


第3者side

あれは拷問初日の話だった。

紫乃は初日の拷問を時々気絶しながら耐え抜いた。意識が朦朧として、今、自分が何をしているか、どこにいるのかさえ考える事も出来なかった。

「今日の拷問は終わりだ」

イビキの何の感情も感じられない無機質な声が、拷問終了の合図を出した。部下達は器具や飛び散った爪や血などを片付けると、足早に出ていった。

紫乃は人が出ていったことが分かるとほっと、息を吐いた。拷問中は長時間殺気や色んな視線を感じるため、かなり精神がガリガリ削られる。

「おい」

ビクッ

「は・・・はい・・・」

どうやらイビキだけ残っていたようだ。全員出ていったかと思っていた紫乃は、震えながら返事をした。

「口開けろ」

「は・・・い・・・」

拷問中、素直に言う事をきかないとさらに酷いことをされるのは身に染みていたので、恐る恐る口を開けた。

ころん

そんな軽い音が口の中でした。
反射的に口を閉じて味わっていた。どうやら飴のようだ。

「・・・あり、がとうございます」

「・・・」

無言でイビキは出ていった。

貰った飴を口の中でコロコロ転がしながら、紫乃は混乱していた。

「(なんでくれたんだろう。イビキさんってそんな甘党のキャラだっけ?)」

いくら考えても、混乱するばかりだ。紫乃は考えるのを諦め、純粋に飴を楽しむことにした。

コロコロ

そんな音が聞こえる。

それから毎日拷問が終わると、イビキは1人残り、紫乃に飴をやるのが習慣になっていた。紫乃自身も、飴が貰えることは不思議には思っていたが、2人きりになった時に、少しだけイビキの気配というか雰囲気が和らぐのだ。紫乃はそれを感じるのが好きだった。

だが決定的だったのは暴行があった日の行動だろう。

いつものようにイビキと部下達が拷問室へ訪れると、扉が僅かに開いていた。不審に思ったイビキは素早く扉を開け放ち、中の惨状を見て、絶句した。情事後の特有のニオイが充満する部屋の中で、紫乃の白い肌が嫌でも目に付いた。

イビキは自分の服で紫乃を包むと、部屋の前で固まっている部下を、殺しそうな目で指示を飛ばした。

「・・・何をしている!突っ立ってねぇで、夜間にこの階にいた全員に拷問でも尋問でもして、犯人を炙り出せ!
それと、お前は女の医療忍者を呼んでこい!1分以内に!」

全員イビキの怒気に当てられ、飛び出すように出ていった。イビキは横たわる紫乃に呼びかけた。

「おい、紫乃、紫乃!」

「・・・・・・い、き・・・さ・・・」

紫乃は意識を失った。イビキは医療忍者が来るまで、紫乃の名前を呼び続けた。

おそらくその時のことが記憶の奥底にあり、だからイビキだけにあれだけ懐いたのだろう。


余談だが、暴行を行った犯人が判ると、イビキは暗部にすら止められない程怒り狂い、綱手まで出てくるほど暴れた。犯人の2人は顔面を見るのもおぞましいほど殴られ、下の物は2度と使い物にはならなかったそうだ。

その場にいた者、全員が、
“イビキを怒らせてはならない”と、深く胸に刻んだ。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ